榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

他人にも自分にも荒れ狂う作家・車谷長吉の本音爆発日記・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3532)】

【読書の森 2024年12月7日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3532)

東京・杉並の浜田山~荻窪を巡る散歩会に参加しました。中道寺(写真1~3)、松林寺(写真4~7)、不動堂(写真8)、1676年の銘がある三猿庚申塔(写真9)、暗渠(写真10)、近衛文麿の別荘・荻外荘(写真11)、松本清張宅(写真12)、成田西ふれあい農業公園(写真13~15)、メジロ(写真15)、オナガガモの雄(写真16)、堆肥作り(写真17)をカメラに収めました。因みに、本日の歩数は18,365でした。

閑話休題、私の一番好きな小説は車谷長吉(ちょうきつ)の『赤目四十八瀧心中未遂』です。『赤目四十八瀧心中未遂』出版直後の1年間の車谷の日記『癲狂院日乗』(車谷長吉著、新書館)を舌舐めずりしながら読みました。

「(『赤目四十八瀧心中未遂』の)初稿が仕上がったのは、翌平成八年二月二十六日夕刻だった。が、この夜から私は俄かに強迫神経症の発作に襲われ、家の中は惨憺たる状況になった。・・・家の中の廊下が動き、スリッパ、靴、下駄が空中を飛び交い、外へ出れば、道が動き、植木鉢から毒素が発散されていて、更にり氏の声が耳許で『駄目ですよッ、駄目ですよッ、駄目ですよッ』と幻聴となって鳴り響き、私の不安・恐怖は頂点に達した。平成八年三月六日、順子ちゃんが思い余って、私を浦和の精神病院へ引っ張って行った」。

この日記には、担当編集者たちや作家に対する悪口雑言が満ち満ちています。あまりの酷さに、車谷の死後出版に漕ぎ着けた妻・高橋順子が、「り」氏とか「よ」氏とか「も」氏とか、頭文字だけの表記に改めています。

車谷は48歳の時、1歳年上の高橋と結婚したのだが、夫婦仲のよさが窺われます。「朝、ふとんの中で順子ちゃんと足で小突き合い、つつき合い、じゃれ合う」。「朝、ふとんの中で順子ちゃんのお乳を愛撫。温かい。発情せず」。

車谷は脅迫神経所や重度の便秘に悩まされながらも、読書を欠かしていません。ゲーテ、永井荷風、谷崎潤一郎、折口信夫、山本周五郎、太宰治、松本清張、白洲正子、水上勉、瀬戸内晴美、司馬遼太郎、高橋和巳、半村良、大江健三郎、沢木耕太郎などの作品を「読了」という記載が目に付きます。

高橋の「あとがき」に、「車谷長吉逝って九年。脱稿してから今年で二十五年である。いまなおなまなましい人と人との争い、欲望、破れかぶれの大騒ぎ、哄笑、滑稽と悲惨とが渦を巻いている。渦の中心にいたのがこの人なのである」とあります。さすが妻、夫のことをよく分かっていますね。