どんなに困難な状況に陥っても立ち直ることを諦めてはいけないんだなと思いました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3667)】
シバザクラ(写真1、2)、ヒマラヤユキノシタ(写真3)、オオアラセイトウ(別名:ショカツサイ。写真4)、ナガミヒナゲシ(写真5)、クサボケ(写真6)、ボケ(写真7、8)、モッコウバラ(写真9、10)、フジ(写真11)、ハナズオウ(写真12)が咲いています。我が家の庭師(女房)から、ウスベニカノコソウ(写真13)、ボンザマーガレット(写真14)が咲き出したわよ、との報告あり。
閑話休題、『カフネ』(阿部暁子著、講談社)を読み終えて感じたことが、3つあります。
第1は、料理や掃除などの日々の家事というのは大変な作業なんだなということ。私は生まれてから今日まで料理・掃除・洗濯を一度もしたことのない人間だから、余計そう感じるのかもしれません。
第2は、初対面では気に食わない人間とも仲良くなることは可能なんだなということ。私の場合は、正直言って、気に食わないままの人間が何人かいます。
第3は、どんなに困難な状況に陥っても立ち直ることを諦めてはいけないんだなということ。この点に関しては、大きく頷いてしまいました。
東京法務局八王子支局に勤める国家公務員、41歳の野宮薫子は、何回も不妊治療に挑戦したのに報われず、突然、夫から離婚を切り出され、独り暮らしになります。その上に、最愛の弟が急死してしまったため、酒浸り、ゴミ屋敷同然の生活を送っています。
弟の遺言書に元恋人にも財産を分けてほしいと書いてあったため、その元恋人、29歳の小野寺せつなと会うことにしたが、この女が実に不愉快な感じの悪い女なのです。
その場で急に意識が途切れて倒れた薫子を、せつながタクシーで薫子の自宅マンションまで送ったことから、二人の人生が交叉します。
ひょんなことから、「カフネ」という「毎日の家事に溺れそうになっている人の助太刀」を目的とする家事代行サービス会社の社員のせつなは料理担当、ヴォランティアの薫子は掃除担当としてコンビを組むことになります。「いいだろう、四十一歳バツイチ社会人の底力を見せてやる」。
せつなは、薫子が目を瞠るほどの料理の達人です。『あなたもなかなか有能なのね。感じの悪い小娘扱いしていて悪かったわ』。『学校の先生みたいな上から目線、やめてもらっていいですか』。
「もう何ヵ月も、いや何年も、自分に価値を感じられずに生きてきた。もう自分は誰にも愛されず、必要とされないと思っていた。けれど今、誰かの役に立つことができた。たったの二時間、それもたいしたことではない。それでも今、ありがとうと言ってもらえた」。
紆余曲折はありながらも、二人の活動はさまざまな悩める人たちの助太刀となっていきます。
よかったよかったと胸を撫で下ろしていたのに、中盤を過ぎ、終盤に入ると、意外な事実が明らかになります。
そして、最終盤には、何と、さらに、思いがけない事実が待ち構えているではありませんか。
個人的には、自らの不幸を呪う小学5年生の少女に向かって、せつなが言い放った言葉が印象に残りました。『資格がなかろうが、未来が真っ暗だろうが、いいことがひとつもなかろうが、人は必ずいつか死ぬし、死ねば全部終わりますから』。