私は深浦加奈子という女優の隠れファンであった・・・【山椒読書論(127)】
【amazon 『栄養指導の今昔』 カスタマーレビュー 2013年1月16日】
山椒読書論(127)
私は、深浦加奈子という、決して華やかとは言えない女優の隠れファンであった。2000年4~9月に放映されたNHK連続テレビ小説「私の青空」に脇役で出演していた彼女のひたむきで存在感のある演技に惹かれ、その後は、彼女の出演作品を心待ちするようになった。そう若いわけでもなく、はっとするような美形というわけでもないのに、なぜか気になる存在だったのである。
深浦加奈子の母の手になる『栄養指導の今昔――職・食・動・住のすすめ』(深浦京子著、医薬経済社)の巻末の「加奈子の『職・食・動・住』」は、自分が現役の管理栄養士でありながら、不規則な生活になりがちでストレスも多い俳優業の娘の健康管理と結腸がん早期発見の役に立つことができなかったという痛切な思いに満ちている。
深浦加奈子は、5年5カ月に亘る闘病の末、48歳の若さで生涯を閉じてしまったが、闘病中も、家族に支えられ、天職と考えていた俳優業に邁進したのである。
「人が生きていくうえで、一番重要なのが「職」であり、次いで働くことを適正に保持し得る「食」生活、そして「動」、すなわち、適当な運動量によって体全体の効率的な代謝を図り、さらに「住」、つまり、そうした心身の休息・睡眠・余暇を充実し得る環境を維持することが肝要」と考える著者の80年に及ぶ歩みも興味深い。