選ばれた短歌が素晴らしいだけでなく、著者の解説も心が籠もっていて素晴らしい一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3936)】
今日の我が家の餌台。








閑話休題、『百年の短歌』(三枝昻之著、新潮選書)には、著者が近代の短歌の中から選び抜いた105首が収められているが、とりわけ私の心に響いたのは、この21首です。
●どれどれ春の支度にかかりませう紅(あか)い椿が咲いたぞなもし――北原白秋
●草萌えろ、木の芽も萌えろ、すんすんと春あけぼのの摩羅のさやけさ――前登志夫
●春の夜にわが思ふなりわかき日のからくれなゐや悲しかりける――前川佐美雄
●背のびして唇づけ返す春の夜のこころはあはれみづみづとして――中城ふみ子
●フィリア美術館のガラスケースに端切れありアウシュヴィッツ囚人の夏衣(なつぎ)の端切れ――橋本喜典
●ぼくも非正規きみも非正規秋がきて牛丼屋にて牛丼食べる――萩原慎一郎
●老いぬれば事ぞともなき秋晴れの日の暮れゆくもをしまれにけり――谷崎潤一郎
●よしもなき大人となりしかなしさがむねを噛むなりふるさとの山――小川正子
●むらさきの日傘の色の匂ふゆゑ遠くより来る君のしるしも――川田順
●吹けば散るただそれだけの人生と恋しりそめしをとめにいひぬ/――柳原白蓮
●きみに逢う以前のぼくに遭いたくて海へのバスに揺られていたり――永田和宏
●手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が――河野裕子
●少女はや憂き世をのがれ少年はひとりし後れ老いてゆくなり――島田修三
●虚無僧過ぎ、尼僧すぎたり 現(うつ)し世は欠損などなにもなき穏やかさ――三枝浩樹
●父と母といづれがよきと子に問へば父よといひて母をかへりみぬ――落合直文
●小田の水沈む夕陽にきららめくきららめきつゝ沈みゆくなり――中原中也
●かの本を買はんとこころ決めしより拠りどころある思ひに歩む――田谷鋭
●夜おそく帰り来たりて抜穴にそっと這入って寐てしまうなり――山崎方代
●そうですかきれいでしたかわたくしは小鳥を売ってくらしています――東直子
●売りたくはないけど売れる本並べ腎臓なんかも売った気がする――佐佐木定綱
●空中に繰り返し書く指で書く「い・た・い」はあと一文字で「あ・い・た・い」――俵万智
選ばれた短歌が素晴らしいだけでなく、著者の解説も心が籠もっていて素晴らしい一冊です。おかげで、短歌の調べの魅力を再認識しました。
