榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

寺島実郎の歴史に対する情熱と造詣の深さに脱帽!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3959)】

【読書の森 2026年1月16日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3959)

本たちが、自分から先に読んでほしいとアピール合戦を繰り広げています。

閑話休題、テレビの数多のコメンテイターの中で、寺島実郎の発言は、その大局観と的確性において群を抜いています。今回、その寺島の『世界認識の再構築―― 一七世紀オランダからの全体知』(寺島実郎著、岩波書店)を読み終えて、驚いたことがあります。政治、経済のみならず、歴史についても広範な知識を踏まえた独自の考察が展開されているからです。

「ドイツから流れ出るライン川の河口の低湿地帯にある小国」のオランダが17世紀に海洋国家として世界に雄飛できたのはなぜかという考察と、オランダと日本との濃厚な関わりに十分なページが割かれているが、全世界の歴史にも筆が及んでいます。

とりわけ興味深いのは、●リーフデ号の漂着、●徳川家康の深慮遠謀、●ピルグリム・ファーザーズはオランダから出発した――の3つです。

●リーフデ号の漂着
1600(慶長5)年4月、豊後(現・大分県)の臼杵湾の海岸に一隻のオランダの商船リーフデ号が漂着したとされているが、これは漂着ではなく、毛織物・羅紗の市場開拓と日本の銀の入手を目的とする意図された日本来訪であった。リーフデ号が保有していた地図(南洋針路図)に石見銀山の所在地が明記されていた。また、この船の乗組員の中に、英国人のウィリアム・アダムス(後の三浦安針)とオランダ人のヤン・ヨーステンがいた。

●徳川家康の深慮遠謀
家康はアダムスとヨーステンの話に耳を傾け、彼らが布教目的ではなく専ら交易を求めていることや、ポルトガル・スペインと新興のオランダ・英国の対立など、複雑な欧州の政治力学を見抜いた。家康は積み荷の代金を支払い、積み荷の中にあった青銅の大砲、小銃、砲弾、火薬などを関ヶ原の戦いで使用した。アダムスとヨーステンを外交や航海術についての顧問にし、朱印船制度を確立し、多数の朱印船をアジアの海に向かわせた。

●ピルグリム・ファーザーズはオランダから出発した
1620年に英国で宗教的抑圧を受けたピューリタンの一団が「ピルグリム・ファーザーズ」としてメイフラワー号でボストン近くのコッド岬に辿り着いたとされているが、事実は、ピルグリム・ファーザーズは、英国国教会から離脱した分離派として弾圧を受けオランダに亡命し、12年間も生活した後、デルフトの外港デルフスファーフェンから米国を目指して出発したのである。途中、英国のサザンプトンに立ち寄り、英国に残っていたピューリタンと合流してメイフラワー号に乗り換え、新大陸を目指した。

寺島の歴史に対する情熱と造詣の深さに脱帽!