榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

アカネズミやヒメネズミと心が通い合っている著者が羨ましい・・・【山椒読書論(143)】

【amazon 『わたしの山小屋日記<秋>』 カスタマーレビュー 2013年2月26日】 山椒読書論(143)

この「わたしの山小屋日記」シリーズに、どうしてこんなに惹きつけられるのだろう。この本を開いていると、心の底から癒やされて、読み終わるのがもったいなくなる。著者が、私の夢である森の山小屋暮らしを実践し、さまざまな動物たちといい関係を築いているから、羨ましいと思うと同時に、癒やされるのだ。

わたしの山小屋日記<秋>――動物たちとの森の暮らし』(今泉吉晴著、論創社)も、私の期待を裏切らない内容だった。

「日ごとに夜が長くなる秋は、夜大好き派の野ネズミには、希望の季節です。・・・そこで、雑木林の野ネズミであるアカネズミに会いに出かけましょう。それも、アカネズミは、どんな場所でどんなふうに食事をしているのかを知る、つまり、森のレストランでアカネズミに会うデートはいかがでしょうか」というのだから、ワクワクしてしまう。「アカネズミのレストランにもってこいなのは、プラスチックの箱か水槽です。水槽は逆さに伏せて置けば即、小さな透明な家になります。そこで、枯れ枝の上に小さな水槽を伏せて置けば、もうアカネズミのレストランの誕生です。水槽のふちをすこし上げ、中にヒマワリの種とドングリ、クルミなど、木の実を入れます。土台の枯れ枝の間から、透明な家に入って食事を始めたアカネズミはそこでゆったり落ち着いた気分になるようなのです」。

「わたしは山小屋に毎夕、ヒメネズミを招待していました。今日は、ヒメネズミに来てほしい、ちょっと遊びたいという日は、昼の間に部屋をドタドタと、騒がしく歩きました。じつは、わたしの友だちであるヒメネズミは、山小屋の壁の間のどこかにすむ同居人で、わたしの足音を聞きつけるのでしょう。夕方、巣から起き出すと、まずはわたしに会いにきてくれました。どうして、会いにきているとわかるかというと、壁の隅に開けた小さな穴から部屋をのぞいて、鼻をくんくんさせて空気のにおいをかぎ、たぶんわたしのにおいを確かめ、そして、大きな目でわたしをじっと見るからです。床を走って、わたしのいすの下にかけ込みます。わたしに会いにやってきたのです」。

ああ、動物たちと心の交流ができる、この著者が本当に羨ましい。