榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ライヴァルの健闘をたたえるMR、妬むMR・・・【MRのための読書論(26)】

【Monthlyミクス 2008年2月号】 MRのための読者論(26)

自分の欠点を知るための本

他人の欠点はすぐ目につくのに、自分のにはなかなか気がつかない。気づいたとしても、そう簡単には直せない。それが人間というものさと嘯く人もいれば、何とか改めようと努力する人もいる。

自分の欠点を教えてくれる本に出合える人は幸運というべきだろうが、『他人をほめる人、けなす人』(フランチェスコ・アルベローニ著、大久保昭男訳、草思社)は一読に値する。

例えば、「他人を引きたてない人」は、「たんに自己中心的であるだけでなく、そねみの念に毒された人でもある。このタイプの人びとは勇気にも欠けている。しかし、その臆病さを隠すことも心得ている。人を先に立てておいて、ことがうまく運ばないとみると、自分は姿を隠してしまう。もしうまく運べば、それは自分の功績だと主張する。卑劣なのは、勇気ある人びとを楯にして身をかばい、その人びとを犠牲にしておいて、それを否定する輩である」と、一刀両断にされている。また、「だらしのない人」の一例として、「どのように仕事に着手すべきかをけっして明示しないリーダーがいる。たとえリーダーが親しげで友情ある振る舞いを示すとしても、全員がこのうえなく不安定な気分で過ごすことになる。外見は人がよさそうでありながら、こういうリーダーは、実際には、独占欲の強い暴君である」という鋭い指摘がなされている。

だからといって、「皮肉っぽい人」「陰口をたたく人」「他人を認めない人」「自分をひけらかす人」「けっしてほめない人」「おべっかを使う人」「電話の応対が横柄な人」といった項目だけで、この本を判断してはいけない。「部下に確信をもたせる人」「コンセンサスをつくれる人」「挑戦しつづける人」「復活できる人」「羨望に支配されない人」「危機を受け入れる人」「情熱的に夢見る人」「先入観にとらわれない人」と読み進んでいくうちに、希望が湧いてくるはずだ。

自分の習慣を変えるための本

若いMRには、『運命を変える50の小さな習慣』(中谷彰宏著、PHP文庫)が参考になるだろう。

項目を挙げれば、「尊敬する□□さんだったらこんな時どうするだろう、と考えてみよう」「人が話している時におしゃべりをする人は、いざという時に話せない」「試してみる前から、言い訳や予防線ばかりを用意していませんか?」「『・・・さえあれば幸せになれる』と考えているうちは、『・・・』が手に入っても幸せにはなれない」「成功しても納得できない人生より、失敗しても納得できる人生を送ろう」「生まれついてのメリットなんて人生では役に立たない。先天的な要素の責任にしている人は、努力を怠っている」「コミュニケーションの基本は、こちらから発信すること」「1つのことを続けることができれば、何でも続けることができる」というように、読む者に平易な口調で語りかけてくる。

自分の友になってくれる本

人生経験を積んだMRには、『心にのこる言葉』(小野寺健著、河出書房新社)が、辛辣ではあるが本音で語り合える友になってくれると思う。その語り口を以下に紹介してみよう。

●言われつくしたことだが、人生に別れはつきものである。ある人に出会って心をひかれ、いつまでもつきあいたい、なぜ別れなければならないのだろうと思いながらも、やがて遠ざかっていくほかはないことなど、誰もがたえず経験していることだ。初めからそれが分かっているために、あえて心をひかれまいとすることだって、いくらもある。それでも、心をひかれ、愛するほうがいいのだろう。そして、その人との出会いによって人間が豊かになり、別れの苦しみに耐えるほうが、初めから避けて通るよりも、自分をそれだけ魅力的にするのだろうと思う。未知の、魅力的な人との出会い――われわれはたえず、ひそかにそれをもとめながら生きている。

●人の思惑を気にするよりは自分が少しでも魅力的な人間になることを心がけて、自然に生まれた友情をたいせつにはぐくみ、せめて1年ごとに、また増えた新しい友人の数を数えられるようになりたい。