製薬企業に入社するまで化学を勉強したことがなかった私が、今回、手にした化学の本・・・【MRのための読書論(187)】
化学
恥ずかしいことに、医薬品業界で数十年間も働きながら、製薬企業の三共(現・第一三共)に入社するまで、私は化学を勉強したことがなかった。この劣等感を何とかしたいと、今回、「中学生・高校生・大学生のもっと知りたい!にこたえる」と謳う『人物でよみとく化学』(藤嶋昭・井上晴夫・鈴木孝宗・角田勝則著、朝日学生新聞社)を手にした。
化学者
本書は、化学者はどう考えたかを知ることが大切という基本方針のもと、化学分野の重要テーマを16に分け、それぞれのテーマに貢献した3人の化学者の研究成果を解説するという方式が採用されている。
●化学の基礎=ボイル、ドルトン、アボガドロ
●水素、酸素の発見とフロギストン説=キャヴェンディッシュ、プリーストリー、シェーレ
●炭酸ガスと窒素の発見とラヴォアジェ=ブラック、ラザフォード、ラヴォアジェ
●周期律=メンデレーエフ、デービー、ラムゼー
●物理化学分野の開祖3人組=ファント・ホッフ、オストヴァルト、アレニウス
●電気化学=ボルタ、ファラデー、ネルンスト
●熱力学と化学エネルギー=カルノー、ジュール、ギブズ
●放射線化学=ベクレル、マリー・キュリー、ユーリー
●反応速度=ハーバー、アイリング、マーカス
化学結合
ケクレ(1829~1896年)が「化学結合の手(原子価)の考え方を提唱」、ルイス(1875~1946年)が「化学結合の手は電子を2つ持つ(共有結合)の考え方を提唱」、ポーリング(1901~1994年)が「化学結合を量子化学で説明した。混成軌道、共鳴理論などを提唱」。
光化学
カシャ(1920~2013年)が「カシャ則(高い階に飛び上がった分子は2階から反応する)を発見」、ポーター(1920~2002年)が「『瞬間を見る』方法を開発」、テュロー(1938~2012年)が「分子の目から見る『分子光化学』を確立」。
高分子化学
シュタウディンガー(1881~1965年)が「高分子の概念を確立」、カロザース(1896~1937年)が「ナイロンを発明」、桜田一郎(1904~1986年)が「ビニロンを発明」。
有機化学
ヴェーラー(1800~1882年)が「有機化合物を初めて合成」、グリニャール(1971~1935年)が「有機金属化合物、グリニャール試薬を開発」、ウッドワード(1917~1979年)が「ビタミンB12の全合成に成功」。
量子化学
ハイトラー(1904~1981年)が「量子力学を初めて物質(水素)に適用」、マリケン(1896~1986年)が「分子軌道法を開発」、福井謙一(1918~1998年)が「フロンティア軌道理論を確立」。
表面分析
ルスカ(1906~1988年)が「電子顕微鏡を開発」、シーグバーン(1918~2007年)が「光電子分光法の高精度化に成功」、ビーニッヒは「走査型プローブ顕微鏡の始祖」。
有機化合物の構造決定
アストン(1877~1945年)が「質量分析器を開発」、コブレンツ(1873~1962年)が「官能基ごとに特有な赤外吸収が生じることを発見」、ラービ(1898~1988年)が「核磁気共鳴信号の検出に成功」。
本書を読んで、化学という学問は幅が広く、かつ奥が深いことを再認識した。
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