榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

悲観主義、楽天主義ではなく、楽観主義で自分の人生を創ろう・・・【MRのための読書論(130)】

【ミクスOnline 『アドラー心理学入門』 カスタマーレビュー 2016年10月17日号】 MRのための読書論(130)

アドラー心理学

アドラー心理学入門――よりよい人間関係のために』(岸見一郎著、ベスト新書)でアドラーの心理学を学んだ人と学ばなかった人とでは、これからの人生に大きな差が生じてしまうことだろう。

オーストリアの精神科医、アルフレッド・アドラー(1870~1937年)は、政治改革による社会変革は難しいと悟り、育児と教育を通して人類救済を実現しようとした。力で子供たちを押さえつけるのではなく、全幅の信頼をもって子供たちに接せよというのが、アドラー心理学の要である。しかし、アドラー心理学が育児論、教育論の枠内に止まっていたなら、ビジネスパースンの関心をこれほど引くことはなかったはずだ。

アドラー心理学は、「どう生きたらいいのか」、「幸福とは何か」という人間にとって根本的な問いに正面から答えてくれる。その特徴は、3つにまとめることができる。第1は、心の中ではなく、対人関係を問題にしていること。第2は、原因論ではなく、目的論の立場に立っていること。第3は、正常・健康・幸福に向けての具体的なトレーニング方法を明示していること。

自分の人生は自分で決めよ

「自分の人生は他の誰も代わってくれませんし、うまくいかないときも自分に代わって問題を解決してもらえるわけでもなく、うまくいかないことの責めを自分以外の外的なもの、あるいは過去の出来事、才能、そういったものに帰することを断固拒否するのです。しかしそのようであるからこそ生きるかいもあるわけで、もしもすべてが決まっていて自分には何もする余地がないとすれば不幸(あるいは、不幸だと思える事態)を前にしてただ手をこまねいて待っていることしか私たちには残されていないことになります。そうではなく自分が人生を創っているのであって、自分がこの人生の主人公であることを知ったとき、人は自分が動くしかないことを学ぶことになります」。

他人を気にするな

「他の人からどう思われているかを気にすると非常に不自由な生き方を強いられることになります。絶えず人に合わせていかなければならないからです。・・・私たちのことをよくは思わない人がいるということは、私たちが自由に生きているということ、自分の生き方を貫いているということ、また、自分の方針に従って生きているということの証拠ですし、自由に生きるために支払わなければならない代償であると考えていいのです」。

わかり合えないと思って付き合え

「そもそも相手を理解することは不可能である、とアドラーは考えているのです。だからこそ言葉を使うコミュニケーションが重要であることを強調するのです。わからないと思って付き合うほうが、人はわかり合えるものだと思って付き合うよりはるかに安全でしょう」。

過去を引きずるな

「一度、これまでのことはすべて水に流して、今日私はこの人と初めて会うのだ、と思ってみるのです。・・・そうすると過去はもうないわけです。・・・今日今この瞬間から付き合い始めるというふうに考えると、いろいろな発見があります。そうしないとずっと過去を引きずっていってしまうことになります」。

楽観主義を選択しよう

「悲観主義は状況に対する勇気を欠いており、何ともならないと諦めて結局何もしないのです。・・・楽天主義は、何が起こっても大丈夫、何が起こっても悪いことは起こらない、失敗するはずがない、と思うことです。大丈夫だと思って何もしません。そうではなくて、楽観主義は現実を見据えるのです。現実をありのままに見て、そこから出発します。・・・とにかくできることをやろうと思ってできることをする・・・これが楽観主義です。とりあえず、できることをしてみれば事態は変わるときは変わります」。