夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。・・・【ことばのオアシス(3)】
【薬事日報 2009年6月15日号】
ことばのオアシス(3)
夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。
――ウィリアム・アイリッシュ
「夜は若く、・・・」と洒落た文章で始まる『幻の女』(ハヤカワ・ミステリ文庫)は、江戸川乱歩に「世界十傑に値す。不可解性、サスペンス、スリル、意外性、申分なし」と絶賛された本格ミステリの傑作。
不快な気分で、ただ一人、街をさまよっていた彼は、バーに立ち寄ったとき、奇妙な燃えるようなオレンジ色の帽子をかぶった女に出会う。レストラン、劇場、バーで一緒に時間を過ごして帰宅すると、喧嘩中だった妻が彼のネクタイで絞殺されているではないか。死刑執行日が刻々と迫る中、唯一の証人であるオレンジ色の帽子の女は見つかるのか。
戻る | 「ことばのオアシス」一覧 | トップページ