幾山河(いくやまかわ)越えさり行(ゆ)かば寂しさの終(は)てなむ(ん)国ぞ今日も旅ゆく・・・【ことばのオアシス(50)】
【薬事日報 2010年11月12日号】
ことばのオアシス(50)
幾山河(いくやまかわ)越えさり行(ゆ)かば寂しさの終(は)てなむ(ん)国ぞ今日も旅ゆく
――若山牧水
上掲は旅と酒を愛した歌人・若山牧水の代表作。寂しさが果てる場所はないのかもしれない。それでも、私は今日も旅を続ける、と21歳の青春の思いを高らかに歌い上げている。「白鳥(しらとり)はかなしからずや空の青海のあを(お)にも染まずただよふ(う)」は、鴎に青春の孤独と悲哀を象徴させている。「白玉(しらたま)の歯にしみとほ(お)る秋の夜の酒はしづ(ず)かに飲むべかりけり」も広く愛誦されているが、秋の夜に独り静かに飲む酒の味わいが伝わってくる。牧水の歌はいずれも、声に出して味わうに限る。
戻る | 「ことばのオアシス」一覧 | トップページ