子供だけでなく、大人にも語りかけてくる写真集・・・【山椒読書論(151)】
【amazon 『さよならトンボ』 『はるにれ』 カスタマーレビュー 2013年3月6日】
山椒読書論(151)
敬愛する福岡伸一が『福岡ハカセの本棚――思索する力を高め、美しい世界、精緻な言葉と出会える選りすぐりの100冊』の中で紹介している『さよならトンボ』(石亀泰郎著、文化出版局)と『はるにれ』(姉崎一馬写真、福音館書店)を早速、手にした。
『さよならトンボ』は、トンボの死にゆく様に焦点が当てられている。著者が前書きで、「この絵本を作りたいと思ったのは『トンボの死』についてだれも何も知らないからだった。・・・ぼくは友人から『トンボの墓』を見たという話を聞いてすっとんで新潟に行った。部屋を借り、毎日トンボが暮らしている小川の畔や草藪に入れてもらったのだった。知っていると思っていたトンボの暮らしは驚きの楽しさがあった。そして『さよなら』していくトンボには感動があった」と述べている。
元気なトンボの写真もいいが、死んでしまったトンボも印象的である。
『はるにれ』は、原野にすっくと立つ1本の大きなはるにれの木の各季節の写真と朝、昼、夜の写真だけで、文章は一切ない。それでも、このはるにれは多くのことを語りかけてくる。
どちらも子供向けの写真集であるが、大人の鑑賞にも十分堪え得る作品だ。