榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

500年前にスペイン人がインディアスで行った悪行の数々・・・【山椒読書論(141)】

【amazon 『インディアスの破壊についての簡潔な報告』 カスタマーレビュー 2013年2月21日】 山椒読書論(141)

インディアスの破壊についての簡潔な報告』(バルトロメ・デ・ラス・カサス著、染田秀藤訳、岩波文庫)は、500年前にドミニコ会の修道士(カトリックの宣教師)によって書かれたスペイン国王への報告書だが、怒りが沸々と滾ってくる本である。と言っても、この本が怪しからんのではなく、ここに記されている当時のスペイン人のインディオ(原住民)に対する所業が余りにも酷く、度を超えているからである。

インディオへのスペイン人の非道な行為を止めさせるべく努めた著者は、自らが目撃したことの、ごくごく一部だけを報告すると何度も文中で断りを入れているが、スペイン人たちのとても信じられないような悪行は、次から次へと際限がないので、読む者を慄然とさせる。

「彼ら(スペイン人)は村々へ押し入り、老いも若きも、身重の女も産後間もない女もことごとく捕え、腹を引き裂き、ずたずたにした」、「13人ずつその絞首台に吊し、その下に薪をおいて火をつけた。こうして、彼らはインディオたちを生きたまま火あぶりにした。また、インディオの体中に乾いた藁を縛り、それに火をつけて彼らを焼き殺したキリスト教徒たち(スペイン人)もいた」、「キリスト教徒たちは彼ら(インディオ)を狩り出すために猟犬を獰猛な犬に仕込んだ。犬はインディオをひとりでも見つけると、瞬く間に彼を八つ裂きにした」、「その殺し方や拷問の方法は種々様々であった。また、彼らは生け捕りにしたインディオたちをことごとく奴隷にした」、「戦争が終ると、男たちは全員殺されてしまっており、生き残ったのはいつも若者や女や子供たちだけであった。キリスト教徒たちはその生き残ったインディオたちを仲間うちで分配しあった」、「島には、300人のインディオを分配されて所有した官吏がいたが、わずか3カ月のうちに、そのうちの270人が鉱山労働で死んでしまい、生き残ったのは全体の10分の1に当る30人にすぎなかった」、「大きな重い荷物をかつがされたため、疲れてへとへとになったり、空腹とその苛酷な労働、それに、生来のひ弱さのために病気になったりするインディオが数人いた。その時、スペイン人たちはいちいち鎖を外すのが面倒なので、インディオたちの首枷の辺りを剣で斬りつけた。すると、首と胴体はそれぞれ別の方向へころげ落ちた」、「キリスト教徒たちはまるで畜生を扱うように身重の女や産後まもない女に重い荷物を背負わせたが、今もその事態に変りはない」、「その場に居合わせたインディオたちは全員集められ、中庭に閉じ込められた。監視役のスペイン人たちが武装して庭の戸口に立ち、一方、残りのスペイン人たちはみな各自手に剣を構えて子羊たち(インディオ)に襲いかかり、剣や槍で彼らを突き殺した」、「インディオたちを奴隷にして、葡萄酒、衣服そのほか様々な品物を積んで来た船に売りとばしたり、いつものように虐待して苦しめたりした」、「彼(スペイン人)は夫婦を無理矢理引き離し、夫から妻や娘を奪い、水夫や兵士たちにあてがった」、「どれほど多くの強姦、凌辱、暴行が犯される破目になったことか」、「平和に暮していた大勢のインディオを絞首刑にしたり、火あぶりにしたり、獰猛な犬をけしかけたり、手足、首、舌を斬り落したりして殺害した」、「彼(スペイン人)は、50人から100人の娘の中からこれはと思う娘をひとりそれぞれ選ばせて、1アローバの葡萄酒かオリーブ油か酢、もしくは、ベーコンと交換した」、「残酷で忌まわしい手口を用いて、子羊や羊ともいうべきインディオやその妻子を捕え、奴隷として売り捌くために(スペイン)国王の焼印を押したのである」、「スペイン人たちが手当り次第にただ気紛れからインディオたちの男や女の手と鼻と耳を削ぎ落しているのを目の前で見た」――これらの非道、邪悪、卑劣、不正、不実、謀略、欺瞞、襲撃、掠奪、破壊、暴虐、虐待、虐殺、殺戮は、後世の実証的な研究によって事実と裏付けられている。

スペイン王室の援助を受けたイタリア人、クリストバル・コロン(クリストファー・コロンブス)が、いわゆる新世界に到着した1492年以降、半世紀に亘り、多くのスペイン人征服者たちがインディアス(新世界)に渡り、数々のインディオの王国を破壊し、大勢のインディオを虐殺し、金銀を掠奪したのである。ああ、人間にこのようなことが許されるというのか。