憧れの野生動物を自宅で飼うには、それなりの覚悟が必要だ・・・【山椒読書論(193)】
『憧れの「野生動物」飼育読本』(横山雅司文、なんばきび絵、彩図社)は、生き物好きには堪らない本である。
第1に、憧れの野生動物――チンパンジー、アライグマ、コアラ、ゾウ、ペンギン、パンダ、サイ、トラ、オオカミ、ワニ、ヒグマ、アナコンダ、ホオジロザメ、イリオモテヤマネコ、アナツバメ、モグラ、深海魚など――を素人が個人で飼育するにはどうすればいいのかという発想が秀逸である。
第2に、その飼育法が文と絵で真っ向からズバリと解説されているので、素人にもよく理解することができる。
第3に、全篇に漂うユーモアが疲れ気味の私たちに癒やしを与えてくれる。
例えば、「知性溢れる怪力のお友達 チンパンジーの飼い方」の章の「チンパンジーを飼う前に・・・」には、「チンパンジーの入手は決して簡単ではありません。そもそも野生の個体は数が少なく、ワシントン条約の附属書Ⅰにリストアップされているため、ペットとして輸入することはできないのです」と記されている。
では、どうすればいいのか。次の「チンパンジーの飼い方」で、「チンパンジーを合法的に飼育する一番簡単な方法は、自宅を『霊長類研究所』に改造することです。ワシントン条約で規制されているチンパンジーですが、例外的に研究目的のためなら輸出入が認められることがあります。自宅を研究所であると納得させるように改造できれば、チンパンジーの入手も夢ではないのです」と解答が示されている。
この後に、飼育施設の具体例、その建設費用、飼育要員の人件費、チンパンジーの購入費、食費などの解説と絵が続く。章の最後に、それぞれの「概算費用」――【チンパンジー】1頭2000万円~8000万円+【施設建設費】+【人件費】+【エサ代】+【特定動物飼養等許可申請手数料】――がまとめて掲げられている。
「実はこの動物、性質が非常に凶暴でサルの肉が大好物というかなり怖ろしい猛獣なのです。野生のチンパンジーは中型哺乳類を集団で襲って食べることがあります。獲物となるのは、主にヤブイノシシの子供やアカコロブスなどですが、ときには他の群れの子供を襲ったり、権力争いの過程で同じ群れのライバルの血を引く子供を食べることもあります」という注意事項も添えられている。「それでもチンパンジーを飼うというのなら、楽しくて、いつ殺されるかわからないドキドキの毎日が待っています。チンパンジーの家庭での飼育、それはまさに猛獣との同居です。チンパンジーが興奮して暴れはじめたら死を覚悟しましょう」。
そして、「チンパンジーの飼育を通して」は、「チンパンジーの飼育を通して、あなたはテレビで作られた動物のイメージの嘘を学んで、ひと回り大きい人間になれる事でしょう」と結ばれている。