カラスは飼えるか。基本、飼えない。以上・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3177)】
ごく少ない冬鳥と位置づけられているニシオジロビタキ(写真1~6)をカメラに収めることができました。枝に止まったときは、盛んにギリリ、ジリリと独特の声で鳴いています。我が家の庭の餌台「空中楽園」にはメジロ(写真8~13)が、「カラの斜塔」にはシジュウカラ(写真14)、スズメ(写真15、16)たちが、入れ替わり立ち替わりやって来ます。
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閑話休題、鳥類を主とする生物を巡るエッセイ集『カラスは飼えるか』(松原始著、新潮文庫)は、興味深い話題がてんこ盛りです。
「カササギはユーラシア大陸に広く分布する、ごくありふれた鳥なのである。ところが、どういうわけか、日本には極めて限定的にしか分布しない。佐賀県を中心として、熊本県、長崎県、福岡県の一部にいる程度だ。九州の個体群の遺伝子は中国大陸のカササギによく似ているが、独自の変化をしている部分もあり、日本に来てからある程度時間がたっていると考えられる。遺伝子の変化速度を知るのは簡単ではないが、まあ百年とか千年の単位だろうか。・・・これを裏付けるような言い伝えがある。九州のカササギは、豊臣秀吉が朝鮮出兵の時に持ち帰ったもの、と言われているのである。佐賀県唐津市にある名護屋城は秀吉が大陸出兵の前線基地として築城したもので、確かにこの地は秀吉、あるいは朝鮮出兵と縁が深い。朝鮮出兵の際ではないとしても、九州はもともと大陸と関連が深いので、どこかの時点で大陸から持ち込まれたものなのだろう」。大分以前のことだが、佐賀県に出張した時、わざわざタクシーを飛ばしてカササギを見に行ったことを、懐かしく思い出しました。
「日本では長らく九州の一部でしか繁殖しなかったカササギが、最近は北海道の室蘭や苫小牧付近でも繁殖している。1980年代から目撃例があり、90年代には繁殖を始めたことがわかっている。このカササギはどこから来たのだろう? 研究によると、北海道のカササギの遺伝子は朝鮮半島のものとは少し違い、ロシアの個体群に極めて似ているという。となると、ロシアから来た鳥と考えていいだろう。では、日本海を越えてはるばる飛んで来たのだろうか?」。著者は、飛来の可能性、ロシアの貨物船からの脱走の可能性を挙げています。
「鳥のような恐竜と、恐竜のような鳥の境目は極めて曖昧で、その区別は困難だ。恐竜の中のどれが鳥の直系の祖先かについてはまだ議論があるにせよ、恐竜と鳥が進化の上で密接に繋がっていることについては、ほぼ疑う余地がないだろう。もちろん、恐竜というのは非常に多様なグループであり、鳥の直接の祖先は、そのごく一部にすぎない」。
「少なくともハシブトガラスは鏡像認知ができない。チンパンジー、カササギ、ハト、イカは、鏡に映っているのが別個体ではない、と理解できる。中でもチンパンジー、カササギ、ハトでは鏡に映った自分の姿を見て汚れに気づき、きれいにしようとする行動が見られる。彼らは鏡を覗いて身繕いができるのだ。ところが、ハシブトガラスときたら鏡を見た瞬間に怒り出し、くちばしで鏡を叩く。鏡に映った自分に喧嘩を売っているのだ。それどころか、山の中でカーブミラーに2度、3度と飛び蹴りをくらわせているハシブトガラスさえ見たことがある」。
「カラスは飼えるか。基本、飼えない。以上」。
「ミヤマガラス、コクマルガラスが見たい!という深みにハマった方は。広い農地があるなら、ミヤマガラスの観察スポットだ。冬に大群でやって来て黙々と落ち穂拾いをしていたら、ミヤマガラスの可能性大である。農耕地の高圧送電線にズラーッと止まるのもだいたいミヤマガラスだ。成鳥は嘴の付け根が白いのですぐわかる。・・・ミヤマガラスの群れの中に小さなカラスがいたら、それがコクマルガラスである」。
「『カラスはどれほど賢いか』(唐沢孝一著)。これぞ元祖カラス本にしてスタンダード。私が研究を始めた頃は、カラスについての本というとこれしかなかった。また、おそらく一番売れた(そして今も売れている)カラス本でもある」。唐沢孝一から直接教えを受けることのできる私は幸せ者です。