女性は清純であってほしいと願う私だが、気がついたら読み終わっていた・・・【山椒読書論(495)】
【amazon 『Red』 カスタマーレビュー 2014年11月12日】
山椒読書論(495)
妻として、母として、平穏な日々を送っていた「私」は、友人の結婚式で、女子大生時代の、ずっと年上の不倫相手に偶然、再会する。誘われるままに、快楽の世界、官能の坩堝の中に落ち込んでいく「私」。
「結婚してからの4年間、一度も男の人と一対一で飲んでいない。今夜だけ、ほんの1時間くらい酔っても罰は当たらないんじゃないだろうか。なにより鞍田さんがどういうつもりで今夜の会をセッティングしたのか、内心はすごく気になっていた」。
「彼がいきなり深めに突いた。腰骨とお尻がぶつかって弾けるように鳴り、抑制がきかずに声が漏れた」。
「本当は、あの家に私がいる意味が分からなくなっていて、このまま連れ去ってほしかった。境目がなくなるくらいにつながって嫌なことをぜんぶ忘れるくらいに激しく抱いてほしかった」。
「鞍田さんが湿った部分に顔を近付けたので、私はびっくりして首を振った。『やだ、本当にやめて。お風呂入ってないし』」。
「好きになってから抱き合うのだと思っていた。快感が先に来て、それによって身体から引きずり出される言葉だなんて知らなかった。好き、とくり返すたびに寒空の下で温泉に浸かったときのような幸福感が全身に広がった。温かくて幸せでなにも不足がない。抱き寄せられた腕の中で、彼がふたたび欲望を放つのを受け止めた」。
31歳の女性作家の手になる『Red』(島本理生著、中央公論新社)は、性愛シーンが頻出する。私は男なので、男の狡さ、身勝手さは分かっているつもりだが、女性は心身共に清純な存在であってほしいと願っている。こう願うこと自体が、それこそ男の身勝手と言われそうだが、そう願いながらも、最後のページまで読み通してしまったのは、著者の力量のなせる業だろう。