謀略、裏切り、騙し合い、何でもありの無明長夜・・・【山椒読書論(576)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年8月11日号】
山椒読書論(576)
横山光輝のコミックス『三国志』(横山光輝著、潮出版社、希望コミックス・カジュアルワイド、全25巻)は、羅貫中の小説『三国志演義』→吉川英治の小説『三国志』の流れを汲んでいる。
「第4巻 徐州の謀略戦」――。董卓の死が全土に伝わると、黄巾賊が再び暴れ始める。その黄巾賊を平らげた曹操は、朝廷から鎮東将軍に任命されるが、曹操はもっと大きな実利を得ていた。「というのは、降伏してきた賊軍30万、さらに領民のすぐれた若者を兵に加え、総勢100万に近い軍勢にふくれあがったからである。今、曹操は着々とその力をたくわえ始めていたのである」。
曹操が徐州攻めに全力を挙げている隙に、国元の兗州を呂布に攻められ、曹操は大敗を喫してしまう。曹操自身も大やけどを負うが、またもや九死に一生を得る。
一方の劉備は――。曹操から攻められようとしている徐州に援軍として駆けつけ、年老いて病に倒れた太守・陶謙から徐州太守の地位を譲られる。「考えてみれば、曹操と呂布が何千何万の兵の血を流しながら領土を奪い合っている時、(劉備)玄徳は一人の血も流さず、請われて一国の太守となっていったのである」。
曹操に完膚なきまでに討ち破られた呂布は、劉備のもとに逃げ込んでくる。「こうして玄徳の好意により、流軍の将・呂布は徐州小沛にその体を休めることになった。はたして、この玄徳の好意、吉と出るか凶と出るか、それは誰にもわからなかった」。
帝の窮状を救い、朝廷の第一人者となった曹操は、都を洛陽から許昌に移す。劉備と呂布の連携を恐れる曹操は、劉備と呂布の離間を謀り、次から次へと罠を仕掛ける。
劉備から留守を任された張飛が、持ち前の酒癖の悪さを衝かれ、呂布に徐州城を奪われてしまう。劉備は流軍の将となってしまったのである。