呉の周瑜は、曹操との赤壁の戦いで、火攻めによって大勝利を収める・・・【山椒読書論(584)】
横山光輝のコミックス『三国志』(横山光輝著、潮出版社、希望コミックス・カジュアルワイド、全25巻)は、羅貫中の小説『三国志演義』→吉川英治の小説『三国志』の流れを汲んでいる。
「第11巻 赤壁の戦い」では、孔明と並び称される名軍師・龐統が登場します。「その頃、周瑜は一人の人物を陣営に招いていた。荊州襄陽の名士・龐徳公の甥で龐統という人物である。水鏡先生とあだ名される司馬徽が、伏竜か鳳雛か、そのうち一人を手に入れれば天下も握れると語ったことがある。伏竜は孔明を指し、鳳雛はこの龐統を指したのである」。
敵の船を一カ所に集め、鎖で繋いでしまうという龐統の「連環の計」と、敵側に向かって吹く東南の風に乗じて火攻めにするという孔明の「火計」が見事な成果を上げます。「孔明は子供の時より気象を観測していて、毎年11月になると2、3日だけ東南の風がきまって吹くことに気づいた。今でこそ、その風は潮流と南国の気温の関係から起こる貿易風と知られているが、当時の孔明はすでにそれを知り、その日の近いことを知っていたのである」。
「いま吹く東南の風が呉の運命を握っていた。この機を外して呉の勝利は考えられなかった」。
「強風にあおられた火はますます勢いを増し、湾内は火焔地獄となった。さらに火の粉は陸の陣にまで降りそそいだ。天幕が焼け、その火の粉が林や森に飛び火した。今や、陸も海も火の海と変わった」。
「そこに見えるのは火、火、火。船も陣も焼き尽くした火焔は東南風にあおられ、さらに燃え広がっていった。この時、曹軍は焼死者溺死者あわせて30万を数えた。歴史に残る赤壁の戦いである」。85万という曹操の大軍に立ち向かった周瑜率いる呉軍が大勝利を収めたのである。
「曹操は懸命に逃げた」。「まさに敗走に次ぐ敗走であった」。
孔明が予想した曹操の逃走路で待ち構えていた関羽は、わずか300余騎が付き従うだけの曹操と相対する。ところが、関羽はかつて曹操から受けた恩を思い、故意に曹操を見逃してしまう。