榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

『高原へいらっしゃい』は、人間と組織の機微が学べる最高のドラマだ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(107)】

【amazon ビデオ『高原へいらっしゃい』 カスタマーレビュー 2015年7月1日】 情熱的読書人間のないしょ話(107)

我が家の書斎の天井近くに八ヶ岳高原ヒュッテの100cm×72cmのカラー写真が掛かっています。1976年3月から7月にかけて17回に亘り放映されたTBSのテレビ・ドラマ『高原へいらっしゃい』の舞台となったこのホテルにどうしても泊まりたくなり、実現した時に購入したものです。その後、老朽化が進み、このホテルには宿泊できなくなってしまいました。

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山田太一原作の『高原へいらっしゃい』(高橋一郎・福田新一・田沢正稔演出、田宮二郎・前田吟・由美かおる出演、amazon インスタント・ビデオ)は、私の一番好きなドラマで、毎年7月になると、女房とビデオを楽しむのが習慣になっています。小室等のオープニング音楽が始まると、たちまち高原へ連れ去られてしまうのです。

野辺山の八ヶ岳高原に、何度も人手に渡り経営が難しいとされた1軒のホテルがありました。物語は冬が終わろうとする時から始まり、夏の観光シーズンまでに限られた予算内でホテル経営を軌道に乗せるべく奮闘する支配人・面川と、彼が集めた7名のスタッフ、地元の協力者3名それぞれが織りなす人間模様が描かれていきます。また、「ホテルを絶対に成功させる」という面川の強い決意の裏には、面川自身の人生の再建を懸けた事情も込められていたことが徐々に明らかになっていきます。

このドラマが私をかくも惹きつけるのは、原作者の山田が人間の裏表を巧みに描いていることに止まらず、組織・企業の再建を実現するには何が必要かを教えてくれるからです。何度見ても飽きない、奥行きの深い不思議なドラマなのです。