榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

小説『うちら、まだ終わってないし』と、テレビ・ドラマ『高原にいらっしゃい』の共通点・・・【山椒読書論(705)】

『読書クラブ 本好きですか? 2022年5月13日号】 山椒読書論(705)

うちら、まだ終わってないし』(宮津大蔵著、祥伝社文庫)は、かなり以前に歌劇団を退団した50歳前後の元男役のポロが、自分なりの舞台のプロデュースを決意するところから幕が上がる。ポロのファンクラブの元代表のケイコ、元男役のロビン、元娘役のヒメ、元男役のタック、元男役のイチカ、元男役のミユキ、元男役のチョモたちが集まるが、素人プロデューサーには次から次へと難題が降りかかってくる。果たして、晴れの日は訪れるのか。

本作品を読みながら、私の一番好きなテレビ・ドラマ『高原へいらっしゃい』を思い浮かべてしまった。

我が家の書斎の天井近くに八ヶ岳高原ヒュッテの100cm×72cmのカラー写真が掛かっている。1976年3月から7月にかけて17回に亘り放映されたTBSのテレビ・ドラマ『高原へいらっしゃい』の舞台となったこのホテルにどうしても泊まりたくなり、実現した時に購入したものだ。その後、老朽化が進み、このホテルには宿泊できなくなってしまった。

山田太一原作の『高原へいらっしゃい』(高橋一郎・福田新一・田沢正稔演出、田宮二郎・前田吟・池波志乃・由美かおる・益田喜頓・尾藤イサオ・北林谷栄・常田富士男・三田佳子出演)は、何度見ても飽きのこないドラマで、毎年7月になると、女房とビデオを楽しむのが習慣になっている。何度も人手に渡り、難しいとされた高原ホテルの経営を軌道に乗せるべく奮闘する支配人と、彼が集めた7名のスタッフの物語である。この8名のいずれもが、これまで順調な人生を歩んできたのではないことが、このドラマに奥行きを与えている。

『うちら、まだ終わってないし』は演劇再建物語、『高原へいらっしゃい』はホテル再建物語だが、これらは人生再建物語でもあるのだ。『うちら、まだ終わってないし』も、今後、何度も読み返すことになりそうだ。