榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

アメリカだけでなく、日本でも進行しつつある経済的徴兵制とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(262)】

【amazon 『経済的徴兵制』 カスタマーレビュー 2015年12月28日】 情熱的読書人間のないしょ話(262)

年の瀬の公園は、静まり返っています。葉をすっかり落としても、オオシマザクラは風格があります。オオシマザクラを前にして、今年を振り返るとともに、来年、やるべきことに思いを馳せました。直径70cmもあるどっしりとしたシラカシの切り株は、まだ木の香りを放っています。ニホンズイセンが清楚な白い花をもう咲かせています。因みに、本日の歩数は16,054でした。

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閑話休題、『経済的徴兵制』(布施祐仁著、集英社新書)は、最近、関心を集めている経済的徴兵制を考える材料を提供してくれます。

経済的徴兵制とは、何でしょうか。「貧困層の若者たちが経済的な理由から軍の仕事を選ばざるを得ない状況のことを、アメリカでは『経済的徴兵制(economic draft)』と呼ぶ」。

アメリカやドイツなどでは、徴兵制から志願制に切り替えられましたが、貧しい家庭の若者たちは経済的理由から軍に志願せざるを得ない状況に追い込まれているというのが、著者の見解です。 さらに論を進めて、「アメリカほどではないにせよ、自衛隊でも一部に『経済的徴兵制』と言えるような状況がすでに生じていることが見えてきた。今後、自衛官のリスクが誰の目にも明らかになり新隊員の確保が困難になった場合、政治的ハードルの高い徴兵制導入よりも、まずは『経済的徴兵制』の強化が先に来ると私は考えている。その条件は、『生涯ハケンで低賃金』の派遣労働者をいっそう増大させると懸念されている労働者派遣法の改定など、貧富の格差を拡大させる安倍政権の経済政策によって、着々と作られているように見える」と、憂慮しています。

隊員募集に苦労する自衛隊の四苦八苦ぶりが、精力的な取材によって浮き彫りにされています。

著者がインタヴューした3等陸佐(少佐)で退官した元幹部自衛官は、自衛隊が抱える弱点について、こう語っています。「陸上自衛隊の中隊長や小隊長は、フル編成で訓練することはほとんどありません。常に欠員の状態で指揮をしているので、自分が率いる部隊の本当の能力が分かりません。実際の戦場では、兵士の3割が損耗したら、その部隊はほぼ壊滅状態だと言われます。自衛隊は、戦う前からその状態で始めないといけないのです。しかも予備役もほとんどいないので、補充もできない。戦闘で兵士が損耗したら、どうやって戦うんですかね」。

「『経済的徴兵制』の何が問題か。答えははっきりしている。国土防衛ではなく、富める者たちの利益のために行われる海外での戦争で、貧しき者たちの命が『消費』される。それは不正義以外の何物でもない。使い捨てにされてよい人間など、この世界に存在しない。まして、これから本格的な少子高齢化を迎える日本には、貴重な若年労働力を使い捨てにする余裕などこれっぽっちもないはずである」という著者の言葉が、重く心に響きます。