日本の中央集権体制を改め、地方自治を真の意味で活性化させよう・・・【情熱的読書人間のないしょ話(485)】
【amazon 『君は憲法第8章を読んだか』 カスタマーレビュー 2016年8月14日】
情熱的読書人間のないしょ話(485)
このところ、我が家のキンモクセイにキジバトのカップルがよくやって来ます。葉に隠れて全体像はよく見えません。
閑話休題、『君は憲法第8章を読んだか』(大前研一著、小学館)は、私たちの目を、私たちがほとんど重要視していない憲法の「第8章 地方自治」に向けさせる役割を果たしています。
「『アベノミクスのエンジンを最大限にふかす』。まさにこの喩えを援用すれば、今の日本は単発エンジン(中央政府)で飛んでいるジェット機のようなものである。・・・(現在の)危機を回避するためには、老朽化した単発エンジンに頼らず、小回りの利く新たなエンジンをいくつも付けて、その総合力で窮地を脱する方法を探るしかない」と、政府と霞が関が全てを支配する中央集権体制を変え、新たな地方自治の実現を目指すべきと主張しています。単発エンジンを卒業し、各自治体が思い思いのエンジンをふかしていくシステムにしなければいけないというのです。
「そもそも、なぜ日本の地方は再生しないのか? 地方に自立する意志も体力も構想もないからだ。その根本的な原因は、江戸時代以来連綿と続いている非常に強固な中央集権の統治機構にあると私は考える」。故に、地方自治を規定している憲法第8章を改正すべきだというのです。また、ドイツとイタリアの地方再生の実例に学べとアドヴァイスしています。
本書によって、著者が憲法第8章の重要性を私たちに知らしめたことは多いに意義がありますが、憲法第2章第9条や「緊急事態条項」よりも先に憲法第8条を「お試し改憲」すべきだという著者の主張には賛同できません。また、著者の日本国憲法に対する低い評価も、私とは見解を異にしています。