日本のタンポポは、セイヨウタンポポに駆逐されたのではなかった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(527)】
先日の甥の結婚式のスナップ写真が妹から送られてきました。その中に、披露宴で姪の長男から「膝の上に座りたい」と言われた女房が彼を抱き上げた時の一枚がありました。彼と65歳差とは、私も年を取ったものだとつくづく感じました。
閑話休題、『日本のタンポポとセイヨウタンポポ』(小川潔著、丸善出版)の20年に亘る調査結果には、目から鱗が落ちました。タンポポは、在来種が外来種に駆逐された明瞭な実例と考えていたからです。
在来種のタンポポは、カンサイタンポポ、カントウタンポポ、シロバナタンポポ、エゾタンポポ、ミヤマタンポポなど15種もあります。これらの日本のタンポポが姿を消し、目にするのは外来種のセイヨウタンポポばかりという状況になっていますが、日本のタンポポがセイヨウタンポポに駆逐されたのではないというのです。
「日本においてタンポポの在来2倍体種から外来種へのいわゆる『交代現象』の実態は、いわゆる『日本のタンポポ』がセイヨウタンポポ類などの外来種タンポポに『駆逐』されていたのではなかったのである」。著者は、その理由を4つ挙げています。①(外来種は)日本の厳しい気候のもとで、多量の種子をつくることで、わずかな生存のチャンスを利用できた。②外来種が進出できる『生物的あき地』が人間活動によって増えた。③外来種の果実は比較的軽く、(飛んで)より遠くまで到達できた。④外来種は3倍体なので、(受精なしに増えることが可能で)1個体でも増えることができた(一方、在来種は自分の花粉では受精できないので、交配相手が必要となる)。
「つまり、両種の生活の違いに伴う生育地の差異が、近年の激しい土地改変によって、極端に増幅されて私たちの前に見せ付けられたということができる。すなわち、都市化や郊外における造成事業の結果、在来2倍体種が根こそぎ排除されたあとの植物的なあき地に、外来種が侵入したというシナリオである」。「在来2倍体種は土地が保存されている、言い換えると大規模な土地の改変を免れてきたところに存続している、いわば(タンポポは土地)保存の指標と考えることができるのである」。外来種のタンポポが目立つのは、私たちが自然環境を大きく変えた結果なのであり、タンポポは環境を如実に反映する指標植物なのです。
増加しつつある雑種の存在が、在来種と外来種との見分け方を困難にしている現状にも言及しています。「純粋の外来種では外総苞片は下垂するものが多いが半ば開くものを含み、4倍体雑種ではこれによく似ているが外総苞片が開かないものも少ないが含み、3倍体雑種ではさらに在来種に似たものがふえるという分析結果だった。こうした事実から、外総苞片の形態だけで在来種、雑種、外来種を確実に識別することは困難であるといえる」。