不必要な持ち物、友人、お金、家族、生き方は捨ててしまおう・・・【情熱的読書人間のないしょ話(677)】
散策中に、黄色い花を咲かすオウバイを見かけました。赤花のウメと白花のウメが咲き競っています。薄桃色のカワヅザクラが咲いています。サンシュユが黄色い花を付けています。ジンチョウゲの花が芳香を漂わせています。因みに、本日の歩数は17,951でした。
閑話休題、『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』(弘兼憲史著、海竜社)には、数年前から老前整理を始めた弘兼憲史の本音が溢れています。
「(僕の)69歳という年齢は平均寿命まで、あと11年です。来年になれば10年となり、再来年には9年になる。確実にカウントダウンは始まっています」。
「老前整理というのは、まだ身体が元気なうちに身の回りのものを整理することです。年を取れば誰しも体力が衰え、疲れやすくなってきます。そうなってからの片付けは大変だし、時間もかかります。重いものだっておいそれと動かせなくなっていることでしょう。そうならないうちに不要品処分などの身辺整理をあらかた済ませておこう、というわけです」。
「いい機会ですから『常識』という棚にしまったすべてのものを一度おろして、ひとつひとつ吟味してみませんか。そうすれば、きっとこれからの人生に必要なものと必要でないものが見えてくるはずです」。吟味の対象が、物理的な持ち物だけでなく、友人、お金、家族、生き方にまで及んでいるのが、本書の大きな特徴と言えるでしょう。
「これまでの60年の人生の中で、自分にからみついているすべてのものを吟味し、ひとつひとつが本当に必要なものかを考える。そして、不必要であれば捨てて、できるだけ身軽に生きていくわけです」。
著者の「老い」と「死」に対する考え方は、私のそれと一致しています。「死も老いもどちらもみんなに平等にやって来るもので、逆らうことはできません。それならば、そのまま受け入れればいいだけです。僕は、『老い』は『衰え』ではなく、『成長』のひとつだと考えています。もの忘れがひどくなろうが、体力が衰えようが、目がショボショボして若い時のように長時間、漫画を描き続けられなくなろうが、『いい感じ』に成長している、と思えば喜びこそすれ、少しも悲しむことはありません。『どう死ぬか』を考えることは、『どう生きるか』を考えるのと同じです」。「いい感じに体力が落ちてきた」、「いい感じに貧乏になってきた」、「いい感じにもの忘れがひどくなってきた」と、プラス思考で生きようというのです。
「僕は、宗教にも死後の世界にも生まれ変わりにも、ほとんど興味がありません。死んだ後に思いが残るなんてことも信じていない。ですから、火葬場で焼かれた後の骨は『海にでも捨ててくれればいい』というのが正直なところ。誰にも迷惑がかからないのであれば、そのあたりに放っておいてくれてもかまいません」。
こういう覚悟があるからこそ、弘兼が描き続けているコミックス『黄昏流星群』シリーズは、深みがあるのでしょう。