榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

初級者も中級者も上級者も、センスのある文章が書けるようになる・・・【情熱読書人間のないしょ話(683)】

【amazon 『センスをみがく文章上達事典』 カスタマーレビュー 2017年2月27日】 センスをみがく文章上達事典(新装版)

樹木観察会に参加しました。樹木の樹皮は、それこそさまざまです。アキニレとハルニレの樹皮もかなり異なります。トチノキの最下段は新しい切り口、上段はトチノキが自ら修復した古い切り口です。カツラの冬芽は二股に分かれています。シデコブシの冬芽のうち、大きいほうが花芽、小さいほうが葉芽です。因みに、本日の歩数は10,059でした。

閑話休題、センスのある文書が書けるようになりたいと考えている人にとって、『センスをみがく文章上達事典(新装版』(中村明著、東京堂出版)は、配慮の行き届いた指導書と言えます。

初級者向けの「第1章 書く」では、文章を明確にさせる基本事項が学べるようになっています。

中級者向けの「第2章 練る」では、表現を豊かにするレトリックの数々が具体的に示されています。「情報待機――サスペンスをつくりだす」、「漸層・漸降――上りと下りは勢いが違う」、「倒置表現――計画的に取り乱す」、「反復法――畳みかけて弾みをつける」、「尻取り文――展開は鎖のように」、「リズムのある文章――軽くステップを踏んで」、「対句表現――形式美はシンメトリックから」、「挙例法――理屈より実感」、「列挙法――ことばの洪水で圧倒」、「省略法――沈黙がものをいう」、「名詞止め――ことばを置き去りにして」、「否定表現――打ち消すのもレトリック」、「婉曲表現――身もふたもある」、「反語表現――ばれるように嘘をつく」、「比喩表現――心の風景をのぞかせる」、「擬人法――万物と語らう」、「洒落――ことばで遊ぶ」、「パロディー――二重写しの愉しみ」、「現写法――臨場感を高める」、「誇張表現――望遠レンズで迫力を」、「逆説――常識を逆なでする」といった、さまざまなレトリックが、達人たちの文章例に触れることによって、自然に身に付くように工夫されています。

上級者向けの「第3章 研く」では、文体をしなやかにブラッシュ・アップするテクニックが紹介されています。

●語感を大切にして、ことばのにおいを嗅ぎわけろ、●読まずにいられないような書き出しを、●結びは、ギュッと締めて、フワッと放せ、●書き手の視点で、カメラワークを意のままに、●人物描写は、登場人物が今にものこのこ歩き出しそうに、●心理描写で心のひだを映し出せ、●感覚描写でイメージに限りなく近づけよ、●風景に体温を添える自然描写を、●表現の深さで、ことばに奥行きを感じさせるように、●息づかいが聞こえるように、表現に「間」を、●余韻・余情で文章の奥へ、その先へ、●弱さや愚かさをしみじみと笑うユーモアを、●譲れない文体が熟すまで自分のスタイルを追求せよ、●表現の奥に人のけはいが感じられるような文章の雰囲気を――と、アドヴァイスしています。いずれも、かなり高等なテクニックですが、私たちが試行し易く導いてくれます。

本書を手元に置いて実行に移す人と、そうでない人との文章センスには、短期間のうちに格段の差がついてしまうことでしょう。