榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ダーウィンは優れた植物学者で、その研究は進化論に大きな影響を与えた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(915)】

【amazon 『感じる花』 カスタマーレビュー 2017年10月17日】 情熱的読書人間のないしょ話(915)

ツノナスの黄色い実はキツネの顔に似ているので、フォックスフェイスとも呼ばれています。いよいよハロウィーンが近づいてきました。モミジバフウの紅葉が始まっています。因みに、本日の歩数は10,717でした。

閑話休題、『感じる花――薬効・芸術・ダーウィンの庭』(スティーブン・バックマン著、片岡夏実訳、築地書館)は、花を巡るさまざまな情報・知識が満載ですが、私の印象に強く残ったのは、「花と科学者」の章です。

「(ロンドンの医師、ネヘミア・)グルーは、雄しべが種子植物の『雄性器官』であり、花粉粒が動物の作る精子に相当することを発見して名を残している」。

「(現・チェコの修道会士、グレゴール・ヨハン・)メンデルの簡潔な実験の一例は次のようなものだった。たいていの植物の花と同様に、エンドウの花は両性花だ。雄性器官と雌性器官が同じ花に一緒に見られる。したがってエンドウの花は、花びらが開いた直後に自分で受粉するのが普通だ。メンデルは、ある親株(花粉提供者、つまり父親の花)から花粉を集め、もう一つのエンドウのつるに咲いた花(種の母親)の受粉可能な雌しべにこすりつけて、自家受粉を妨害した。・・・メンデルは、エンドウの形態には発現するもの(目に見える形態)と潜伏するもの(隠れているが存在するもの)があるという結論に達した。・・・たび重なる交配と丹念な記録により、メンデルは繰り返し現われる奇妙な3対1の比率に関して、2つの法則化を行なった。この観察結果が(対立遺伝子の)分離の法則と独立の法則になった。大学の生物学の学生は、今日この2つをメンデルの遺伝の法則として理解している」。

「チャールズ・ダーウィンはメンデルの同時代人だったが、その画期的ながら世に認められない業績に気づかなかったようだ。それでもダーウィンは、栽培品種化された一年草についてメンデルと共通の関心を抱いていた。しかしダーウィンの研究はさらに進んでいた。ダーウィンは植物界全体を通じて花の形態の変異に興味を覚えた。何百種もの花がダーウィンの顕微鏡の下を通り過ぎていった。花を栽培できないときは、田舎の家のまわりで野生の植物を探しに出かけた。イギリスの田園に自生するランとサクラソウが、ダーウィンの進化論の確かな証拠を示すなどと、誰が予想できただろう?」。

「ダーウィンは成人してからの40年あまりを、ケント(現在のロンドン南端の郊外)にある田舎の屋敷とその周辺で過ごしたことは、重視しなければならない。1859年の『種の起源』出版のあと、ダーウィンは自宅を拠点にした研究に基づいて続けて本を書いた。それらの本のうち7冊は植物の研究で、その中の3冊はほとんど花の形態、機能、生殖だけを扱っていた」。

「植物は『種の起源』の中で重要な概念を説明している。ダーウィンが『生存競争』と言ったとき、それは大きな海外の島や獣ではなく、自分の庭や植林地での研究に基づいていた。あまりに多くの種子を庭の一つの区画にびっしりとまくと、発芽した植物のほとんどは枯れたり、花が咲くまで十分に成長できなかったりする。今日、これを『適者生存』と呼び、植物生態学者は今も過密効果の研究を行なっている」。