榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

私、ただいま極めてシアワセな老人です・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1060)】

【amazon 『はじめての八十歳』 カスタマーレビュー 2018年3月18日】 情熱的読書人間のないしょ話(1060)

原種シクラメンが紫色の花を咲かせています。ヒマラヤユキノシタが薄桃色の花を付けています。デンドロビウムのラヴメモリーフィズという園芸品種が白と薄紫色の花を、イエローソングキャンディという園芸品種が黄色い花をまとっています。クンシランの鮮やかな朱色の花が目を惹きます。因みに、本日の歩数は10,418でした。

閑話休題、『はじめての八十歳』(山藤章二著、岩波書店)は、80歳になった、独特の似顔絵、風刺漫画で知られるイラストレイター・山藤章二が好き勝手に綴ったエッセイ集です。

「面白いもので、年をとると、若い頃には気がつかなかった些事に気がついたり、思いがけない発想をすることが、しばしばある」。「『若い頃には見えなかったものが見える』、これは神が与えてくれた、老人へのオマケ(グリコのおマケ)、みたいに思えるのだ。若い頃、人間を元気に働かせていた主力エンジンが、耐用年数を過ぎて弱って来たとき、入れ替わりに眠っていたエンジンが、冬眠から覚めたようにむっくり起き上がることってあると思う。ま。押さえのリリーフ投手みたいなもので」。私も、同じように感じることがあります。

「同時代人たちが次々とあの世に逝く。あっという間に逝く。ドサクサに紛れて私も逝きたかったが叶わなかった」。

「わずかだけど、(私の人生の)残りはまだある。(砂時計が)落ち切るまでに何かをしたいと考えた。何をしようか。大切な青春期にし残したアレをしようか、『考える』ということ」。

「今の、これからの人間、ともに過剰情報時代に入ってしまっているから、必要でない情報に一喜一憂するのはつまらんぞと言いたい」。

「『あの世にも、次の世界が、あるかしら』。この川柳は凄い。・・・わずか十七文字であの世からの次の世を心配している。恐るべし素人川柳。俳句より諷刺漫画より上だ」。

「貧富は遺伝する。悲しいかなこれは現実である。金持ちはその子弟にいい教育をさせ、いい学校に入れる。いい学友や強い先輩に出会う。彼らは連帯感が強いから後輩たちをえこひいきする。かくしてあらゆる分野で組織の上澄みに所属できる。このタテヨコに張りめぐらされたクモの巣は強固で、貧乏で家柄にも恵まれない若者が食い込もうとしても甚だしく困難だ。身分差は今でも生きている。・・・貧(に)は貧のシアワセ、富(に)は富の不幸がある。かくして貧富の間に横たわるバリアは永遠になくならない。それでいいのだ。そういうものだ世間は」。この部分に限っては、残念ながら著者に賛成できません。

「彼女たちよ、君らがモテたいと思って痩せようとしてるのなら見当違いだぞ。ムッチリと、肉がついた女性が好きな男も多い。そういうことを研究してから痩せるなり食べるなりを決めなさい。ご苦労さま!」。そのとおり! 私も同意見です。

「私、ただいま極めてシアワセな老人です」。著者のように、こう言い切れる老人でありたいと、つくづく思いました。