モテないオスは必死に歌い続ける定め――身近な野鳥のあれこれ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2300)】
『身近な「鳥」の生きざま事典』に登場するカブトムシのバラバラ死体(写真1)、キジバトの交尾(写真2)、キジバトの巣(写真3)、夏季に囀るホオジロ(写真4)、イソヒヨドリの雄(写真5)、雌(写真6)――を私もカメラに収めていました。
『身近な「鳥」の生きざま事典――散歩道や通勤・通学路で見られる野鳥の不思議な生態』(一日一種著、SBクリエイティブ)は、ほぼ毎日、散策しながら野鳥観察をしている私にとって、いろいろと勉強になりました。
●虫のバラバラ死体が地面に落ちていたら――
「夏になってくると、カブトムシやクワガタなどの甲虫類を食べることが多く、硬い外皮の部分だけがバラバラになって落ちています。事件現場の上に、ちょうどよさそうなとまり木があれば、アオバズクの仕業かもしれないと考えていいいでしょう」。昨日、カブトムシの雄のバラバラ死体を見つけたばかりです。
●ツバメが低く飛ぶのは雨が近いしるし?――
「ツバメは、生活のほとんどを空中で過ごし、エサとなる昆虫も飛びながら捕らえて食べています。しかし昆虫たちは、低気圧が近づいて湿度が高くなると、なぜか地面の近くを飛びます。そのため、昆虫を追うツバメも低いところを飛んでいるので、その様子から雨が近いと予測できる、というわけです」。
●ハトの求愛はしつこい。何度も頭を下げてお願い――
「キジバトの求愛も、ドバト同様にとてもしつこいです。オスはメスに近づくと、のどをふくらませた首を上下に振りながら、メスに迫ります。メスは厭がって後退するも、オスはさらにメスに近づきながら求愛を続けます。しつこいナンパに耐えられなくなったメスがその場を飛び去ると、オスも追いかけて、とまった先で再び求愛を始めます。再び逃げるメス・・・追いかけるオス・・・逃げるメス・・・。すごい執念です」。このとおりのキジバトのオスとメスのやり取りを、私は昨日、目撃しました。オスの強引さに根負けしたのか、遂に交尾に至りました。
●「ホケキョ」は2種類、ラブソングならキーが高め――
「実はこの『ホケキョ』という歌は、1種類ではありません。鳥のさえずりには、求愛のほか,なわばり宣言、ときには敵の接近を知らせるなどの役割もあります。大きく分けると、ウグイスのホケキョには2種類のパターンが確認されています。一つはH型(High:高いという意味)で、主にメスへの求愛で歌われています。もう一つはL型(Low:低いという意味)で、なわばり宣言として歌われています。H型は美しく高い声、L型は、『ホー・・・ホホホホケキョ』と、ホケキョの前が少し断続して、かつドスの利いた低い声に聞こえます」。今後は、L型も意識して、ウグイスの鳴き声を聞くようにしなければ。
●鳥類の交尾はあっさり一瞬で終わる――
「オスが羽をバタバタさせてバランスをとりながら、メスに乗っかり、数秒で終わってしまいます。鳥類の交尾が短時間で終わる理由の一つに、そのシンプルさがあります。鳥類にはカモ類などの例外をのぞいて基本的にペニスがなく、総排泄口という、肛門と生殖口を兼ねた穴を連結させて交尾を行います。オスはメスの背中に乗っているだけのように見えますが、鳥のお尻は意外と曲がるので、この体勢で総排泄口をくっつけることができます。オスにはペニスがないので、総排泄口を合わせ、オスからメスに精子を送る、これだけで交尾は終わります」。
●それで本当に完成? ワイルドすぎる巣――
「とっても『雑』に巣づくりをする身近な鳥がいます。それは『ハト』です。キジバトの巣は木の枝に、小枝を適当にのせただけのような雑な巣をつくります。下からのぞくと卵が見えてしまうこともあります」。我が家のモクレンにキジバトがよく巣をつくるが、本当にスカスカです。
●モテないオスは必死に歌い続ける定め――
「鳥類のさえずりが最も聞こえるのは繁殖期の初期。春です。それから徐々にさえずりは落ち着いていきますが、なかには、夏頃になっても必死になってさえずっているオスたちがいます。パートナーが見つかっていない。少し気の毒なオスたちです」。
●都市に進出中! 美しく鳴く青い鳥――
「イソヒヨドリはツグミ程度の大きさで、オスはお腹が赤く、顔から背中が青い美しい鳥です。日本では名前の通り、『磯』で主に見られる鳥でしたが、近年は海岸から遠く離れた内陸部でも見られるようになりました。本来の『磯』では、崖地の岩のすき間などに営巣しますが、内陸部では建物の屋上や屋根のすき間、通風口などに営巣しています」。私が住んでいる柏市や隣接する流山市では、近年、しばしばイソヒヨドリのオスとメスを見かけます。
●鳥が可愛く首をかしげるわけ――
「鳥類は私たち人と違って、眼球をぐるぐる動かしていろんな方向を見ることができません。その分、頭をよく動かして、いろんな方向を見ようとします。つまり、小鳥類が首をかしげているときは、上空の天敵などを気にしているのでしょう」。
●他の種族との共同生活で厳しい冬を乗り切る――
「繁殖が無事終わり、子どもたちが親離れすると、鳥たちの当面の仕事は次の繁殖期まで『生き残ること』だといえます。そのためにシジュウカラなどのカラ類やエナガ、コゲラ、メジロなどは繁殖が終わると、それらの違う種類同士が混じり合って群れをつくります。これを『混群』といいます。混群になると、エサを見つけやすかったり、天敵に気づきやすかったりと、様々な素晴らしいメリットがあります」。私も、シジュウカラの群れにヤマガラが混じっているのを、よく見かけます。