榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

人生は、運と適応だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2322)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年8月26日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2322)

殺害現場(食痕。写真1~3)に遭遇しました。被害鳥はドバト(カワラバト)、加害鳥はオオタカと思われます。高木に貼り付いているハラビロカマキリの卵鞘(写真4)を見つけました。ホップの雌株が、ビールの苦みと香り付けに使われる実(毬花。写真5、6)を付けています。

閑話休題、『最後の講義(完全版) 適応力――新時代を生き抜く術』(出口治明著、主婦の友社)は、学生への講義の筆記録です。

とりわけ印象深いのは、この3つです。

その1――。
「よい本を選ぶ方法は3つあります。1つ目は、古典です。歴史、哲学、思想、科学、文学など、人間が探求してきたさまざまな分野の知の結晶として、何百年にもわたって読み継がれてきた古典は、よい本だから残ってきたのです。つまらない本は初版で絶版になりますから。古典の中から興味のある本を選びましょう。2つ目は、立ち読みです。本屋の棚の前に立ったら、僕はまず装丁を見ます。装丁の面白そうな一冊を手に取ります。・・・ちょっと失礼して、最初の5~10ページを立ち読みしてみて、面白ければ買います。僕は自分で本を書いているからわかるのですが、書く人は読んでほしいから書いているのです。当然のことですよね。ということは、最初の5~10ページにもの凄く力を込めて書いているはずですから、そこを読んでつまらなければおそらくたいした本じゃないと思います。最初が面白ければ、ぜひ買いましょう。3つ目は、新聞の書評です。図書館に行けば何種類も新聞が置かれています。だいたい週末に書評が載りますが、とくに大手の新聞は見栄っ張りで、書評委員は有名大学の先生や芥川賞作家といった著名な人に頼むことが多いようです。頼まれた人は、自分の名前入りで専門分野の本を責任を持って選書し、書評を書くわけです。頑張ると思いませんか? アホなことを書いたら、この人はたいしたことない人やなと思われるじゃないですか。プロが名前入りで書くということは、インセンティブが自動的に働くので、みんな一所懸命書くんですよ。その書評を皆さんが読んで面白そうだなと興味を持ったら、その本との相性も合うはず。いい本を選ぶ方法はこの3つです」。私も、家で朝日新聞、図書館で毎日新聞、読売新聞、産経新聞、日本経済新聞の書評欄を毎週、チェックしています。

その2――。
「世界には78億人の人間が暮らしています。その中から、理想の相手を一人ひとり丁寧に選んでいる人はどこにもいません。たまたま相性がよい人と出会い、たまたま結ばれたに過ぎません。人生にとって何よりも大事なパートナー選びでさえ、偶然に左右されているのです。・・・人間が動物である以上、生き残るために必要なのは『強さ』や『賢さ』や『大きさ』ではなく、『運』と『適応』がすべてなのです。適切なときに、適切な場所にいるという『運』を生かしながら、その運に対応できたものだけが生き残っていけるのです。それがダーウィン以来の自然淘汰説の神髄です。僕は人生をそのように考えています。・・・(適応できるように)頑張るために必要となるのが『知識×考える力』です」。私も、人生は運が96%と考えています。

その3――。
「僕の友人の名文句に『人生を無駄にしたければ、済んだことを愚痴る、人を羨ましがる、人によく思われようとする。この3つを、ぜひやってください』というのがあります。人生を無駄にしたくない人には避けてほしいのですが、3つ目の『人によく思われようとする』ことから逃れるのはなかなか難しいと思います。なぜなら人間は見栄っ張りで、プライドや自意識が過剰な生き物ですから、ついつい人によく思われようとしてしまいます。すると、失敗する姿を人に見せることを恐れて、チャレンジしなくなっていくのです。チャレンジをしない人生に、頑張るための原動力やモチベーションは生まれないと思います」。私も年を重ね、「済んだことを愚痴る」と「人を羨ましがる」ことは卒業できたが、「人によく思われようとする」ことから、なかなか脱却できません(涙)。