榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「倭の五王」は2つの王統、継体天皇は「周縁王族」という仮説・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2404)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年11月16日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2404)

シシユズ(オニユズ。写真1)、トウガラシの変種のヤツブサ(写真2)が実を付けています。ヤツデ(写真3)、ビワ(写真4)、キク(写真5、6)が咲いています。

閑話休題、『倭国――古代国家への道』(古市晃著、講談社現代新書)は、5~6世紀の日本に関し、独自の見解を提示しています。

とりわけ興味深いのは、「倭の五王」、継体天皇、『播磨国風土記』を論じた3点です。

●「倭の五王」――
5世紀には、仁徳・履中・反正と受け継がれた王統(仁徳系)と、允恭・安康・雄略・清寧と受け継がれた王統(允恭系)が対立していた、両者の間には血縁関係がなかった――と主張しています。すなわち、倭王を出すことができる王統が、複数存在していたというのです。

著者は、「倭の五王」については、讃=履中、珍=反正、済=允恭、興=安康、武=雄略――と考えています。

●継体天皇――
5世紀には、倭王を出す王族とは拠点と系統(血縁)を異にする王族たち(著者は「周縁王族」と名づけている)が存在した、継体天皇は「周縁王族」であった――と推考しています。

「周縁王族」の継体が倭王になるには、実力だけでなく、倭王にふさわしい権威を手に入れることも必要でした。「継体は仁徳系王統の最後の倭王、武烈の同母姉、手白香女王を后妃に迎えることで、その目的を果たした。継体と手白香女王の間に生まれたのが、欽明天皇である。欽明こそは、父が拡大した権力基盤と、母の持つ前代以来の権威の双方を備えた新しいタイプの倭王であった。欽明以降、倭王の地位はようやく血縁により安定的に継承されるようになる。世襲王権の成立である。倭国における専制的な権力体は、5世紀末から6世紀初頭、継体天皇の即位によって成立し、安閑、宣化、欽明と続く新たな王統によって確立されたといえるのである」。

●『播磨国風土記』――
その時代の歴史を深掘りするには、風土記などを通じた地方理解が欠かせないと強調しています。