榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

読み終わった時、営々と働き続けてくれている自分の体に感謝したくなる本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2899)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年3月25日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2899)

我が家の頭上で、キジバトが愛を交わしています(写真1~4)。左の雄が右の雌の上に乗り、遂に思いを遂げた瞬間は、私のほうが緊張して撮影に失敗してしまいました。ツバキが落花しています(写真5)。ジンチョウゲ(写真6、7)が咲いています。私の好きなワサビナ(写真8)を女房が見つけました。

閑話休題、『人体大全――なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか』(ビル・ブライソン著、桐谷知未訳、新潮社)を読み終わった時、営々と働き続けてくれている自分の体に感謝の念が生じました。

「体はよく機械にたとえられるが、機械よりはるかに優れている。体は、(たいていは)定期修理や予備部品の取りつけなしで何十年ものあいだ一日24時間働き、水といくらかの有機化合物で稼働し、柔らかでそれなりに美しく、可動性と順応性を大いに発揮し、熱心に生殖に励み、冗談を言い、誰かに愛情を感じ、赤い夕日と涼しいそよ風をしみじみと味わう。そのどれかを実行できる機械がいくつあるだろうか? 疑問の余地はない。あなたは本物の奇跡なのだ。しかし、一応指摘しておくと、ミミズにも同じことがいえる」。

「わたしたちの体は、ほぼ休みなく、ほぼ完璧な協力態勢で働いてくれる。37兆2千億個の細胞から成る宇宙だ。たいていの場合、完璧ではないことを示すしるしは、痛みや消化不良の苦しみ、奇妙なあざや吹き出物くらいしかない。命取りとなるものは何千種類もあるが――世界保健機関が編纂した『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』によると、8千余り――ひとつを除けばそのすべてから逃れられるのだ。ほとんどの人にとっては、悪い話ではない」。

「人生の奇跡は、わたしたちがいくつかの弱点を与えられたことではなく、それに打ち負かされずにきたことだろう。自分の遺伝子が、ほとんどの期間ヒトですらなかった先祖から伝えられたものであることを忘れないでほしい。彼らの一部は魚だった。さらに多くは小さく毛むくじゃらで、地面に掘った穴に住んでいた。そういう生き物たちから、あなたはボディープランを受け継いできた。あなたは、30億年にわたる進化が微調整を積み重ねた、その賜物なのだ。もし、みんなであっさり新規蒔き直しを図って、ホモ・サピエンス特有の必要性に合わせて設計した体に取り替えられるなら、今よりずっとうまくやれるだろう。膝や腰を壊さずに直立歩行し、窒息する危険を冒さずにものを飲み込み、まるで自動販売機のように楽々と赤ん坊を産めるようになるかもしれない。しかし、ヒトはそんなふうにはつくられなかった。わたしたちは、温かく浅い海を漂う単細胞の小さな塊として旅を始め、歴史を歩んできた。それ以降の何もかもが、延々と続く興味深いアクシデント、とはいえ、かなりすばらしいアクシデントでもあった。そのことを、これから本書ではっきりさせていきたいと思う」。この著者の目的は、十分に達せられています。

「ヒトは死なないように設計されている」、「セックスという優れた『生存戦略』」、「極端に非効率なヒトの生殖」、「いちばん危険なのは進化のはやいインフルエンザ」、「長生きしたければ金がいる」、「『人を死なせるのはライフスタイル』という時代」、「わたしたちの寿命は細胞にプログラムされている」、「人が110歳まで生きる確率は7百万分の1」といった、興味深い記述に溢れています。

個人的に、とりわけ印象に残ったのは、「アルツハイマー病にお手上げ状態」です。「最大の謎は、なぜアルルハイマー病になる人とならない人がいるのかということだ、いくつかの遺伝子にアルツハイマー病との関連が見つかっているが、どれも根本的な原因として直接関わってはいなかった。単に年を取ることでアルツハイマー病になる可能性は大幅に高まるが、ほとんどあらゆる悪い病気についても同じことがいえる。高い教育を受けているほどアルツハイマー病にはなりにくいが、活発で知識欲の旺盛な精神を持つことこそが、きっとアルツハイマー病を防いでくれるものに違いない。健康的な食事をとり、少なくとも適度に運動し、健全な体重を保ち、まったくタバコを吸わず、酒を飲みすぎない人では、あらゆる種類の認知症にかかるリスクがかなりまれになる。立派な生活を送ってもアルツハイマー病のリスクを排除できるわけではないが、約60パーセント減らすことができる」。明日から、こういう生活を心がけるぞ!