榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

最古の生命はいつ生まれた? カンブリア紀の農耕革命とは?・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2978)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年6月12日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2978)

アジサイ(写真1~4)、ガクアジサイ(写真5~8)が咲いています。

閑話休題、『化石のきほん――やさしいイラストでしっかりわかる 最古の生命はいつ生まれた? 古生物はなぜ絶滅した? 進化を読み解く化石の話』(泉賢太郎著、菊谷詩子絵、誠文堂新光社)で、とりわけ興味深いのは、●最古の生命はいつ生まれた? ●カンブリア紀の農耕革命、●恐竜のウンチ化石から驚きの発見――の3つです。

●最古の生命はいつ生まれた?
「今のところ、地球最古の生命の痕跡と考えられているのは、約39億5000万年前の炭質物です。炭質物とは炭素に富んだ有機物のことで、カナダのラブラドル地域に分布している世界最古の岩体の中から見つかりました。大きさは数十~数百μmと非常に小さく、おそらく生命体のすべてが残っているわけではなく、生命体を構成していた有機物の一部に由来するものと考えるのが妥当でしょう。・・・少なくとも約39億5000万年前には地球上に生命が存在していたということは、地球最古の生命が誕生したのはそれ以前だということです。残念ながら、それが実際に何年前なのかということはわかっていません。ただし、地球誕生後の比較的『すぐ』の段階で既に生命が存在していたであろうことは確かです」。

●カンブリア紀の農耕革命
「カンブリア紀になると、堆積物中に深く潜り込むような行動をとる動物が急激に増えてきたと考えられています。実際に、カンブリア紀の地層からは生物が潜り込んだことを示す巣穴化石が多く見つかるようになります。それでは、このような『潜る』という行動の獲得と『農耕革命』という名称は、どのように関係しているのでしょうか? カンブリア紀に入って、海底堆積物中に深く潜る動物が増えたため、海水中に溶け込んでいる酸素が堆積物の奥深くまで供給されるようになりました。こうして、代謝時に多くの酸素を必要とするような大型の動物でも、堆積物深部に潜って生息できるようになったのです。すなわち、動物が堆積物中に潜り込んで攪拌することで酸素がますます供給され、結果として深く潜って生息する動物が増えていったと考えることができます。それはまるで、人類が鉄具(鍬)を用いて地面を掘り起こすことで地中深くまで肥料が供給され、作物の生産量を増すことに成功した『農耕』の歴史によく似ています。それが『農耕革命』というネーミングの由来です」。

●恐竜のウンチ化石から驚きの発見
「カナダ・アルバータ州にある白亜紀末の地層から、太さ約20cm、長さ約60cmという、超巨大サイズのウンチ化石が発見されました。地層形成当時の時代背景とその大きさから、このウンチ化石はティラノサウルス類のものと考えられています。・・・このウンチ化石の薄片(岩石や化石のプレパラート)を顕微鏡で観察してみると、驚くべきことに獲物のものと思われる筋組織が残されていました。・・・ティラノサウルス類のものと考えられるこの超巨大ウンチの内部では、『酸欠状態』になっていた可能性があります。見方を変えれば外部環境から隔離された閉鎖空間であるので、ウンチの中では独自の環境が局所的に成立していたものと考えられます。この超巨大ウンチ化石は、ウンチの中に残っていた獲物の筋組織が完全に分解される前に、ウンチ自体が鉱物に置換されて化石化したものと考えられます」。

いろいろと勉強になる一冊です。