植物と動物の利益が一致する「動物散布」とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3105)
サクラ ‘アーコレード’(写真1、2)、キンモクセイ(写真3~5)、サルヴィア・レウカンサ(メキシカンブッシュセージ、アメジストセージ。写真6)が咲いています。カキ(写真7)、ミカン(写真8)が実を付けています。散歩中のプードル(写真9)に出会いました。
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閑話休題、『わたしの森林研究――鳥のタネまきに注目して』(直江将司著、さ・え・ら書房)で、とりわけ興味深いのは「動物散布」の研究です。
「植物は果実の果肉の部分を動物に食べ物として与える、その代わりに、動物は果実に含まれる種子を別の場所にまで運んであげる、という関係だ。このような動物のタネまきを、動物散布という」。
「植物が種子散布によって受ける利益を、植物の立場からもう少しくわしく説明しよう。種子散布には、大きく3つの利益が考えられている。親から逃げられること、新天地へ移住できること、遺伝子を交流できることの3つである」。
「このような3つの利益から、植物は種子散布のためにいろいろな工夫をしている。まず、何に種子を運んでもらうかであるが、この時点でさまざまなものがある。大きくは、海流散布、水流散布、自発散布、動物散布がある」。
「動物散布には大きく分けると3種類ある。動物に種子がくっつく付着散布、種子が食べ残される貯食散布、果実ごと種子が飲み込まれる周食散布の3つである」。
「周食散布は植物全体の3分の1を占めると言われている。さらに、温帯の森林の樹木のうち35から71パーセント、熱帯の森林の樹木では75から90パーセントが周食散布をおこなうとされている。つまり、我々が目にする森は、動物によって作られ、動物によって維持されている森なのだ。そして我々は、その恩恵に大いにあずかっている。たとえば、動物たちのために植物が作った果実をヒトは分けて食べさせてもらっている。バナナ、パイナップル、サクランボ、カキ、ミカン、ブドウなど、数えあげればきりがないくらいだ」。
「周食散布には、非常に多くの動物が参加する。鳥類、哺乳類、カメ類、トカゲ類、魚類、アリ類、バッタ類、カニ類、ナメクジ類などが種子散布をおこなうことが知られている。・・・散布者の中でも、鳥類と哺乳類は特に重要な動物と考えられている」。
「周食散布をおこなう植物の多くは、主要な種子散布者である鳥類と哺乳類に食べられるように果実を進化させてきた」。
「我々がふだん食べている果実のほとんどは哺乳類散布型の植物である。品種改良がされていない野生の果実であっても、哺乳類散布型のものはおいしく感じるものが多い」。
著者の森林研究で明らかになった、森林改変は鳥による散布を減少させていたという指摘は看過すべからざる問題ですね。