榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

当時のヴェルサイユ宮殿での生活は、寒くて、不潔で、臭かった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3144)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年11月25日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3144)

紅葉・黄葉観察会に参加し、トモエガモの雌(写真1、2)、ホシハジロの雄(写真3~5、5の手前)、ジョウビタキの雄(写真6)、オオハナアブ(写真7)、ウスタビガの繭(抜け殻。写真8)、カヤネズミの古い巣(写真9)をカメラに収めました。クヌギの葉の虫癭(ちゅうえい、虫瘤)・クヌギハケツボタマフシ(写真10)には、寄生昆虫クヌギハケツボタマバチの幼虫が入っています。因みに、本日の歩数は15,506でした。

閑話休題、『ヴェルサイユ宮殿に暮らす――優雅で悲惨な宮廷生活』(ウィリアム・リッチー・ニュートン著、北浦春香訳、白水社)を読み終わった時、何度か訪れたことのあるヴェルサイユ宮殿に対するイメージが激変してしまいました。

●住居――居室不足に翻弄される貴族たち

●食事――豪華な食事は誰のものか

●水――きれいな水は必需品

●火――寒い部屋は火事の危険と隣り合わせ

●照明――窓と鏡と蝋燭だのみの薄暗い部屋

●掃除――清潔さとは無縁の宮殿

●洗濯――洗って干す場所を求めて右往左往

「太陽王ルイ14世の残したこの宮殿を訪れる人々が思い浮かべるのは、貴族たちの社交の日々だ。贅沢な食事、着飾った女性たち、水面下の駆け引き、舞踏会や音楽会・・・。ところが、馬車が交通手段だった当時、パリから22キロ離れていたこのヴェルサイユの地での宮廷生活は、そこに常時住まなくてはならないという大きな制約をも意味していた。身分の貴賤に関係なく、三度の食事、掃除洗濯、入浴や排泄など、日常生活の基本は人間に共通である。著者の関心は、ヴェルサイユの表の顔ではなく、日々繰り返されるこうした人間くさい毎日の営みにあった。もちろん、まとまった資料などない。著者は、当時やりとりされた手紙や、官僚機構の報告書などを精力的に読みこんだ。・・・膨大な量の情報の断片から織物を紡ぐように当時の姿を明らかにしている」。この「訳者あとがき」が本書の性格を要領よく表現しています。

「そもそも、ヴェルサイユ宮殿に226室の居室があったということすら想像しがたいが、著者が物語る当時の様子は、驚きの連続だ。使用人はおろか、貴族たちの部屋でさえ、寒さに凍え、煙突の煙にいぶされ、薄暗く、狭苦しかったこと。豪華な食事会でふんだんに出される食事は、残り物がおこぼれの要領でたくさんの人々のお腹を満たし、最後は城館の外でまで売られていたこと。電気のない当時の照明に使った蝋燭は官位に応じた支給制で、溶け残りをかき集めた役得の蝋や、未使用分の返品で得るお金が収入の一部となり、実質上の通貨のようになっていたこと。水を引いてくるのも汚水を処理するのもたいへんで、飲み水が貴重だった上、美しい庭園の噴水や運河が悪臭のもとにすらなっていたこと。トイレが足りず、城館や庭園で用を足すのが普通だったこと。便槽の掃除をする技術が未熟だったため、掃除の際に死者が出るほどの悲惨な状態だったこと。宮殿の廊下や中庭に勝手に台所をつくりつけたり、こっそり暖房を取りつけたりして、そこがもとで火事がよく起こったこと。王族の着衣ですら洗って干す場所が定まらず、洗濯物がはためく光景が城館からも見えたこと・・・」。

圧巻は、排泄問題です。「トイレの数はそもそも、宮廷に出仕している者とその召使いたちを含め、城館の人数に見合ったものとはほど遠かったからだ。数がまったく足りないため、尿意をもよおした者は、廊下や階段や中庭で用を足した。・・・もっとひどいこともあった。使用人が溲瓶(しびん)の中身を城館の窓から捨てていたのだ」。