『百人一首』の編者は藤原定家ではなかった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3276)】
サクラ三昧の一日。ソメイヨシノ(写真1~5)、ハクサンハタザクラ(写真6)、チハラザクラ(写真7)、チョウシュウヒザクラ(写真8)、ササベザクラ(写真9)、ゴシンザクラ(写真10)、ケンロクエンクマガイ(写真11)、オオヂョウチン(写真12)、イヨウスズミ(写真13)、イトククリ(写真14)、ヤエミヤマザクラ(写真15)が咲いています。因みに、本日の歩数は11,668でした。
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閑話休題、『百人一首――編纂がひらく小宇宙』(田渕句美子著、岩波新書)には、驚くべきことが書かれています。
『百人一首』の編者は藤原定家ではないというのです。それでは、誰が編者なのか? 「『百人秀歌』が定家撰で、それをもとに『百人一首』が作られたが、その成立は後世の『続後撰集』以降の可能性が高いと推定される」。
「『明月記』などの資料を時系列で整理し、証跡のないことを排して考えていくと、資料の力によって曇りが消え、『百人秀歌』は文暦2年5月27日以前の成立で定家撰、『百人一首』は鎌倉中期以降に後人の誰かが手を加えて改編したものであろうことが、鮮やかに浮かび上がってくる」。
「『百人一首』の編者は、この頓阿である可能性がかなり高いとする説がある。『百人一首』の作者名表記を厳密に見ると全体に誤りが多く、頓阿はこうした撰集の故実には暗いこと、また当時の歌壇状況など、いくつかの論拠が示されており、説得力がある」。定家没から約120年後の南北朝期の、二条家の地下の門弟である僧・頓阿が編者だというのです。
「『百人一首』は、最後に(『百人秀歌』には載っていない)後鳥羽院・順徳院の2首を置いたが、それだけでなく、歌97首は(『百人秀歌』と)同じなのに、なぜか『百人秀歌』の配列をあちこちで並べ替えて改編している。『百人秀歌』の撰者が定家であり、『百人一首』が定家以外の編である可能性が極めて高いことが判明した今、『百人一首』編者は『百人一首』の配列をどのような意図をもって構成したのか、これは重要な問題として浮上してくるのではないか」。
「『百人一首』は、2首の対や3首以上の歌群において、『百人秀歌』をしばしば改編して、時に大胆に、歴史的な視点で劇化する演出を緩急をつけてちりばめているとみられる。従来は『百人秀歌』も『百人一首』も定家撰と言われることが多かったため、その違いがぼやけていたが、『百人一首』が定家以外の編である可能性が極めて高いことが判明した今、定家が配列したのではなく、定家ではない後世の誰かが配列したからこそ、ある部分が、歴史を紡ぐような物語になっていることがくっきり見えてくる。それが『百人一首』の特質の一つであり、魅力となっているのではないだろうか」。
本書の大胆な主張は、資料をしっかり読み込んでのものなので、強い説得力があります。そして、『百人一首』が今日に至るまで広く愛好されてきた理由も明らかにしています。