榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ジャック・ウェルチは、ゼネラル・エレクトリックを労働者階級に背を向けた最初のアメリカの大企業にした張本人だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3439)】

【読書の森 2024年9月12日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3439)

ホウキギ(学名:バッシア・スコパリア、旧学名:コキア・スコパリア。写真1)が青々としています。日本料理店「木曽路」で昼食を摂りました(写真2~8)。因みに、本日の歩数は11,927でした。

閑話休題、長いこと、私を含む多くのビジネス関係者が世界最高のビジネスパースンだと思い込んできたジャック・ウェルチのことを、彼こそ資本主義を歪めた張本人だと弾劾する本が出現したと知り、慌てて、『ジャック・ウェルチ――「20世紀最高の経営者」の虚栄』(デイヴィッド・ゲレス著、渡部典子訳、早川書房)を手にした次第です。

著者は、ウェルチはトーマス・エジソンが創業したゼネラル・エレクトリック(GE)を、高品質なエンジニアリングと立派な商慣行で知られた称賛すべき製造業の大企業から、従業員をろくに顧みず、短期的利益に溺れる、無秩序に広がった多国籍コングロマリット(複合企業)へと変貌させたと批判しています。

ウェルチは、フリードマンが提唱した株主至上主義の体現者として、1981年から2001年まで会長兼CEOとしてGEを率い、時価増額を42倍にまで伸ばしました。ウェルチがフルに活用した手法は、ダウンサイジング、事業売買(ディールメイキング)、金融化――の3つだと指摘しています。

ウェルチは、そのほとんどが再投資か労働者の賃金に充当されていた企業利益を、株主還元と経営陣の報酬に振り向けたと非難しています。その結果、ウェルチの年収は940%増えたのに、同期間の平均的な労働者の賃金増加率は12%に過ぎないと暴露しています。

本筋から逸れるが、ウェルチが数十年に亘り、陰に日向に、ドナルド・トランプに手を貸してきたことが明らかにされています。

訳者の渡部典子は、行き過ぎた部分はあるにせよ、当時の企業を取り巻いていた環境に鑑みると、著者デイヴィッド・ゲレスが主張するほどウェルチの経営手法が悪いものとは思えない、と本音を漏らしています。私も訳者と同じ読後感を持ちました。