榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

エクアドルのアマゾン上流の村に入植した老人の物語・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3507)】

【読書の森 2024年11月15日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3507)

私は東京育ちだが、シーサーにはなぜか心惹かれます。

閑話休題、『ラブ・ストーリーを読む老人』(ルイス・セプルベダ著、旦敬介訳、新潮社)は、エクアドル東部のアマゾン上流の村に開発の波がひたひたと迫ってきた頃の、一番古い入植者の老人の物語です。

ある日、外国人の惨殺体が発見されます。太っちょの市長は先住民の仕業にしたがったが、老人、アントニオ・ホセ・ボリーバル・プロアニョはオセロット(南米の山猫)に襲われたことを証明してみせます。

老人は嫌々ながら、市長が組織した山猫討伐隊に加わることを余儀なくされます。

自分が辛うじて字が読めることに気づいた老人は、恋愛小説を愛読するようになります。

こなれた訳文のため順調に読み進んできて、「訳者あとがき」に至った時、正直に言うと、戸惑いを感じました。訳者・旦敬介は、本書は、発展途上国の自然保護運動という底流の上で展開される、自然と人間の関係を問うた作品だと見做しているが、私には、読書の喜びを知った老人の物語、そして、2mはあろうかという大きくて賢い雌山猫と老人との壮絶な死闘の物語のように思えるからです。