榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

慶應義塾大学卒業生は本書を読んではいけません・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3535)】

【読書の森 2024年12月9日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3535)

散策の途中、公園の中にオープンしたカフェで、熱帯魚を眺めながら昼食を摂りました(写真1~9)。以前、数年に亘り熱帯魚飼育に夢中になったことを懐かしく思い出しました。我が家の庭の餌台に常連のメジロ(写真11~17)たち。

閑話休題、『福澤諭吉――幻の国・日本の創生』(池田浩士著、人文書院)は、言論人・教育家として、その名も高き福澤諭吉の言論の過程を、実証的に辛辣な視線で辿っています。

例えば――
●封建制を支えてきた身分差別に基づく人間観と価値観を事実上拠り所にしながら、卑しい力役者(肉体労働者)ではなく心労者(頭脳労働者)となり貴人富人となるために学ばねばならぬ、と力説した。

●民権拡張と国権伸張を実践する主体は士族階級しか考えられないと、その能力を高評価する一方で、<百姓町人ハ・・・豚ノ如キモノナリ>と決めつけている。

●日本はアジア諸国の仲間から抜けて、西洋の文明国と歩みを共にし、支那朝鮮に対しては西洋人がそれらに接するやり方に従って処理すればよいと主張した(福澤は、英国人がインドや中国の「土人」に対して同じ人類とは思えない苛烈な扱いをするのを見ている)。

私は慶応義塾大学卒業生ではないが、福澤は、日本人が、そして日本という国家がどうあるべきか真剣に考え、それを公に表明し続けた水先案内人であり、その足らざる点を現代の価値観から云々するのは、いささか酷だと考えています。