榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

悪魔として生き天使として死ぬ、そんなことができるもんか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3991)】

【読書の森 2026年2月16日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3991)

ツグミ(写真1)をカメラに収めました。我が家の餌台の常連のメジロ(写真3~6)。

閑話休題、オンラン読書コミュニティ「読書の森」の仲間の太田光枝さんに教えられた『お父さん戦争のとき何していたの――ナチスの子どもたち』(ペーター・ジィフロフスキー著、マサコ・シェーンエック訳、二期出版)を手にしました。

ユダヤ人の著者が、戦後に、ナチスを親に持った子供たちにインタヴューしたものです。

とりわけ印象深いのは、●アンナ、●シュテファニー、●ルドルフ――の3人です。

●お父さん、戦争のとき何していたの?(穏当なアンナ・女39歳)
1947年生まれのアンナの父親は強制収容所の警備隊長でした。1959年に、以前拘置されていた人たちから父が訴えられ、殺人のかどで起訴されるが、1年後に無罪判決が下され、両親や友人たちが大喜びしたことが語られています。

「どんなことが起きたのか知ったのが、まず初めのショックでした。2番目のショックは、父がそれに加担していたと知った時です」。「先生に教えてもらったことの中で一番重要なのは、ドイツでの残虐行為が大昔にされたのではなく、私が生まれるほんの少し前に起きた、という事実でした」。

「お父さん、戦争のときは何してたの?」とアンナが問うと、両親は答えるどころか、質問したアンナを大声で罵る始末です。

●あたしに理解できるような説明なんか、これっぽっちもなかった(誇り高きシュテファニー・女19歳)
シュテファニーの祖父はナチスの大物で戦後、死刑になっています。

「われわれが戦争を勃発させた、われわれがユダヤ人をガス室で殺した。われわれがソ連を荒廃させた――なんてよく言われてるけど、あたしがしたんじゃないわよ。まったくもう、なんてこった」。「ユダヤ人にした卑劣な行為全体に対して、19歳のあたしに共犯だなんてバカげてるわ」。

「祖父は絞首刑にされるほど、いったいどんなひどいことしたっていうの? この問いにちゃんと答えられたのまだ一人もいないわよ。これまでおやじに何度尋ねたことだろう。でも答えはいつも同じ、『悪い人間だった』ってね。・・・あたしに理解できるような説明なんか、これっぽっちもなかった」。

●悪魔として生き天使として死ぬ、そんなことができるもんか(罪を背負ったルドルフ・男36歳)
1950年生まれのルドルフの父親は、第三帝国についての本に必ず名前が出てくる貴族階級の人物です。

「両親は南アメリカに亡命していました。新しい名前と新しいパスポートを手に入れてね。『自由』世界での再出発ってわけだ。だからって匿名なんかじゃない、堂々とね。友だちや戦友に囲まれての生活ですよ」。

「一度ね、たった一度だけ父は酔っぱらって口をすべらせたことがあった。ある時バカな兵士どもが標的を立ってる大人たちにあわせて機関銃で撃ったため、後から子供たちが一人一人ピストルで射たれなくてはならなかったのは酷(むご)かった、ってね」。

「親たちはあんなことがあったにもかかわらず、なぜ子供をつくるなんて途方もないことしたんだろう。普通とかわりない家族みたいに暮らそうなんて。悪魔として生き天使として死ぬ、そんなことができるもんか」。

「私は自分の子供を持ってはならないんだ。この家系は私一代で死に絶えなければいけない。子供たちにおじいちゃんについて、いったいどんなふうに話しゃあいいっていうんだ」。

戦争の悲劇、被害者側の悲劇、加害者側の悲劇について、考えさせられました。