榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

かつて自分が存在しない時があったことなど、誰も気にしない。とすれば、自分がいなくなる時が来ることも、何でもないはずだ。・・・【ことばのオアシス(41)】

【薬事日報 2010年8月9日号】 ことばのオアシス(41)

かつて自分が存在しない時があったことなど、誰も気にしない。とすれば、自分がいなくなる時が来ることも、何でもないはずだ。

――ウィリアム・ハズリット

英国の批評家・エッセイスト、ウィリアム・ハズリットが『テーブル・トーク』の中の「死の恐怖」に記したこの一節は、妙に説得力がある。例外なく、否応なしに、死は全ての人間に訪れるが、このように考えると少しばかり気が楽になる。

作家・山田風太郎の「いろいろあったが、死んでみりゃあ、なんてこった、はじめから居なかったのとおんなじじゃないか、みなの衆」(『人間臨終図巻<Ⅱ>』)という言葉も、期せずして、同じことを言っている。