榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「不死時代」の生存戦略とは・・・【薬剤師のための読書論(32)】

【amazon 『Die革命』 カスタマーレビュー 2019年4月7日】 薬剤師のための読書論(32)

3つの視点

Die(ダイ)革命――医療完成時代の生き方』(奥真也著、大和書房)を、そんじょそこらの健康本と同一視してはならない。一般向きに書かれているが、内容のレヴェルがかなり高く、しかも多岐に亘っているので、3つの視点――●外的要因と内的要因、●肉体的要因と精神的要因、●医療戦略と生存戦略――から読み進めることにする。

外的要因と内的要因

外的要因とは、健康を守るための医学・医療がどれくらい進歩しているかということであり、内的要因とは、私たち一人ひとりが健康にどう対応しているかということである。内的要因は、改めて、肉体的要因と精神的要因に分けて考察されるので、ここでは外的要因について見ていこう。

著者は、今や「不死時代」に差し掛かっていると主張している。「不死時代」とは、あと数年もすれば、健康問題に過度に気を使わなくても、長生きできる時代を意味している。その医療の急激な進歩状況と近未来の医療環境について、162ページに亘り、データとエヴィデンス(科学的根拠)に基づいて、詳細かつ丁寧に解説されている。予防、診断、治療、予後について、また医薬品、医療機器、その他について、重要なものは可能な限り網羅されているので、医療関係者が自分の知識を整理する、あるいは知識を最新のものに更新しようとする場合も、十分役に立つだろう。著者の放射線医としてのキャリア、製薬企業、医療機器企業勤務のキャリアが存分に生かされているからだ。

肉体的要因と精神的要因

肉体的要因として、私たちが「不死時代」を迎えるためにやるべきことが、具体的に挙げられている。
●生活習慣病に注意する。
●「多病息災」を前向きに受け入れ、病気の数を減らそうなどと意気込まない。
●定期的に診察を受ける。
●定期的な診察で指示されたことをきちんと実行する=完調ではない臓器をできるだけ長持ちさせる。
●暴飲暴食をせず、喫煙を止める。
●歯周病の悪化を予防する。
●体重は、やや太め(BMI22を少し上回るくらい)を維持する。
●食事は規則正しく摂る。バランスのよい食事に拘る必要はない。
●水分を十分に摂取する。
●度の過ぎた強い運動は避け、ほどほどの運動(1日8000歩程度)を続ける。

精神的要因については、このようにアドヴァイスされている。
●ストレスを溜めない。
●何らかのコミュニティで人と関わり続ける=孤立を避ける。
●「よいこと」は迷わず受け入れ、実行する。「折に触れて病院に行くことや、生涯薬を飲み続けることを後ろ向きにとらえるのではなく、『普通のこと』『よいこと』として受け止め、受け入れるという、気持ちのパラダイムシフトが必要だということです」。

医療戦略と生存戦略

医療戦略については、私たちは、医療の進歩を願いながら、静かに見守るしかないだろう。

「不死時代」の60歳以降の生存戦略については、利己的自己優先から利他的自己優先へシフトすべきと提言している。利他化が人生を豊かにし、それが健康寿命を延ばすことに繋がるというのである。