榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ミドリムシが、本当に地球を救うのか・・・【続・リーダーのための読書論(30)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2013年8月19日号】 続・リーダーのための読書論(30)

勇気を与えてくれる本

僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。――東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦』(出雲充著、ダイヤモンド社)は、若者に勇気を与えてくれる本だ。

微細なミドリムシ(学名・ユーグレナ)が、地球の食料・栄養不足、エネルギーの枯渇、温暖化を一挙に解決する驚くべきパワーを秘めているというのだ。その上、長年の研究を以てしてもほぼ絶望視されていたミドリムシの大量培養に、日本のバイオベンチャーが世界で初めて成功したというのだから。

「植物と動物の間の生き物で、藻の一種でもあるミドリムシは、植物と動物の栄養素の両方を作ることができる。その数は、なんと59種類に及ぶ。しかも体内に葉緑素を持つため、二酸化炭素を取り入れ、太陽のエネルギーから光合成を行うことができる。すなわち、CO2削減という意味でも、救世主となりうる。さらにそれだけではなく、ミドリムシが光合成により作り出し、体内に蓄えた油を石油と同じように精製すれば、ロケットやジェット機の燃料として使えるバイオ燃料が得られる」。

3つの読み所

バイオベンチャー起業の苦闘記録ともいうべき本書の読み所は、3つある。

第1は、このバイオベンチャーを立ち上げた出雲充(いずも・みつる)の志の高さだ。「ビジネスを通じて、飢えに苦しむ人々(特に途上国の)に栄養素を提供したい」という崇高かつ強烈な使命感を抱いていたからこそ、幾度となく襲いかかる危機を乗り越えることができたのだ。

第2は、出雲が、自分の弱さを隠さない正直な人間であることだ。本書の至る所で、人間としての弱さが率直に語られている。それぞれの弱点を一つずつ克服していく樣は、ビルドゥングスロマン(成長物語)のように読む者をワクワクさせる。

第3は、事業を成功させるには、人との出会いがいかに大切かということだ。無名であろうと実力を備えた人や、出雲の夢に共感した有名人(堀江貴文、成毛眞ら)が、ここぞという時に登場し、出雲をがっちりと支えてくれたのだ。

地球温暖化の映像

著者が、ミドリムシにとって大きな追い風となったと記している、地球温暖化に警鐘を鳴らした長篇ドキュメンタリー映画『不都合な真実』(DVD『不都合な真実』<デイヴィス・グッゲンハイム監督、アル・ゴア出演、パラマウント・ホームエンターテイメント・ジャパン>)は、一見の価値がある。