榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「ホモ・サピエンス・サピエンスのアフリカ単一起源説」が揺らいできた・・・【山椒読書論(289)】

【amazon 「日経サイエンス2013年11月号」 カスタマーレビュー 2013年10月4日】 山椒読書論(289)

日経サイエンス2013年11月号」(日経サイエンス社)に掲載されている「混血で勝ち残った人類」(M・F・ハマー著、千葉啓恵翻訳協力、篠田謙一監修)には、人類の進化に関し、驚くべきことが書かれている。

ホモ・サピエンス・サピエンスがネアンデルタール人などの旧人と交配していたことが、DNA解析から明らかになってきたというのだ。

ホモ・サピエンス・サピエンスの起源を巡る長期間に亘った論争は、「アフリカ単一起源説」(「出アフリカ起源説」)が「(世界)多地域進化説」に勝ちを収めるという形で決着したはずなのに、旧人と交配していたことが明らかとなった以上、「アフリカ多地域進化説」が一番説得力があると、この著者は主張するのである。

「交配説」は、ホモ・サピエンス・サピエンスが旧人に取って代わる過程で、ごく稀に彼らと交配し、遺伝子移入があったと考える。これに対し、「アフリカ多地域進化説」は、主にアフリカでの旧人からホモ・サピエンス・サピエンスへの移行期に着目し、アフリカの各地で旧人との交配による遺伝子移入があったと考えるのである。

DNA解読技術の進歩を受けて交配の証拠が上がってきたからには、今後は「アフリカ多地域進化説」に注目せざるを得ないだろう。