榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

東京で消耗している人向けの田舎移住の手引き書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(377)】

【amazon 『まだ東京で消耗してるの?』 カスタマーレビュー 2016年5月9日】 情熱的読書人間のないしょ話(377)

21年前から私の「好きな写真たち」ファイルに収まっている一枚の写真があります。『アメリカ人の見た日本 50年前』(毎日ムック)から切り抜いた「備中グワで水田を耕す少女(1950)」には、当時の素朴で健康的な少女が写っているからです。

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閑話休題、『まだ東京で消耗してるの?――環境を変えるだけで人生はうまくいく』(イケダハヤト著、幻冬舎新書)は、東京での生活で「消耗」している人には救いの書となることでしょう。

「こんにちは、イケダハヤトです。ぼくはブログだけで生活している、フリーランスの『プロブロガー』です。ぼくは現在、高知県の限界集落に住んでいます。出身は神奈川県横浜市、東京で5年ほど仕事をして、2014年、縁もゆかりもない高知県に家族3人で移住しました。本書のタイトルは刺激的なものですが、こうして東京を離れてみると、東京で暮らすことのアホらしさがくっきりとわかります。東京暮らし、消耗しませんか? ぼくはもういい加減、東京生活に嫌気がさして、『脱東京』してしまいました。で、今は『ど田舎』といっても過言ではない場所に住んでますが、これがまた、毎日最高に楽しくて、『なんでさっさと移住しなかったんだろう・・・』と後悔するレベルなのです」。

「住居費、保育料、交通費・・・『お金のために働きつづける』のは、なんというか、ぜんぜんワクワクしませんよね。人生は、もっと自由で創造的なものなのです。たかがお金を稼ぐために、理不尽な環境に耐え、自分を殺すことはないのです。難しい話ではなく、シンプルに『東京を捨てて、別の地方に住んでみる』だけで、生活は劇的に変わります。こどもを育てることは容易になり、生活コストは下がり、それでいて収入は上向きになり、豊かな人間関係のなかで、創造的に生きることができるようになります。これは夢物語ではなく、ぼく自身が実際に体験していることです。なんでさっさと東京を離れなかったんだろうなぁ・・・」。

著者の言う「ど田舎」に移住して1年半時点の体験リポートの中間報告ですが、単なる田舎への移住の勧めに止まっていないところに、本書の特徴があります。「田舎のほうが圧倒的に稼ぎやすい」、「限界集落に移住して、こんなに幸せになりました」、「『ないものだらけ』だからこそ地方はチャンス」と、内容が非常に具体的なのです。その上、「移住で失敗しないための5つのステップと知っておくべき制度」と「移住に関する『よくある質問』」の章も充実しているので、東京で消耗している人が移住への一歩を踏み出し易くなっています。

移住して、こんなに幸せになった一つの具体例として、「移住してから夫婦関係がよくなった」が挙げられています。「もともと割と仲睦まじい方ではありますが、高知に移住してから、妻との関係性がバージョンアップしました。何かというと、妻が頼もしくなったんです。・・・こちらに移住してから、妻との『役割分担』ができてきた感じがしています。ぼくはお金を稼ぎ、外との接点を増やすのが役割。妻は美味しいご飯で家族を支え、外の世界とぼくをつなぎとめてくれる役割。フェーズによって役割は変化していくのでしょうけれど、今はとてもしっくりきています。東京時代は余裕がなかったんでしょうね。こういう『役割』を意識するほどまで、お互いの関係性や専門性を磨くことができていませんでした」とさ。

著者が胸を張るように、本書は「たぶん、日本で唯一の『超ポジティブかつ具体的に、移住の方法をまとめた書籍』」でしょう。