榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本の古典文学に学ぶ老いの道しるべ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(728)】

【amazon 『古典の叡智』 カスタマーレビュー 2017年4月16日】 情熱的読書人間のないしょ話(728)

茨城・桜川の岩瀬で、行き合ったバード・ウォッチャーが指し示した先にサシバの雌がいるではありませんか。先ほど、空を舞っていた個体かもしれません。そのバード・ウォッチャーが、2017年3月に茨城・涸沼に迷鳥として飛来したカオグロアメリカムシクイ(国内初確認)を撮影した写真を見せてくれました。ウワミズザクラ、キブシ、ニワトコ、モミジイチゴ、クサイチゴ、チゴユリ、カントウタンポポ、カキドオシ、キランソウ(ジゴクノカマノフタ)が見つかりました。

閑話休題、『古典の叡智――老いを愉しむ』(小野恭靖著、新典社)では、老いを迎えた人々の人生の道しるべになるようにと、日本の古典文学作品中の先人たちの含蓄ある言葉が紹介されています。

●老が身の あはれを誰に 語らまし 杖を忘れて 帰る夕暮(老いの身の切なさを、誰かに語って聞かせたいものよ。杖を忘れて帰るこの夕暮れのわが身の悲しさを)――良寛。

●名利につかはれて、閑かなる暇なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ(名誉や利益といった欲望に支配されて、心静かに人生の時間を過ごす間もなく、生涯にわたって自分を苦しめるのは、何と愚かなことか)――吉田兼好『徒然草』。

●老後は若き時より月日の早きこと十倍なれば、一日を十日とし、十日を百日とし、一月を一年とし、喜楽して、あだに日を暮らすべからず(老後は若い時と比べて、時間の経過が十倍も速いので、一日を十日、十日を百日、一月を一年と考えて、人生を喜び楽しんで、一日一日を無駄に過ごすべきではない)――貝原益軒『養生訓』。

●何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ(いったい何をしようというのか、真面目くさって。どうせ人生なんて夢のようにはかないものだもの、ただ遊び狂うのがよいのだ)――『閑吟集』。

●朝(あした)には紅顔あって 世路に誇れども 暮(ゆうべ)には白骨となって 郊原に朽ちぬ(朝方には紅顔をもってこの世に誇らしげにしているけれど、夕方にはたちまち死を迎え、その白骨が野外で朽ち果ててしまう)――『和漢朗詠集』・藤原義孝。

●死は前よりしも来たらず、かねて後ろに迫れり(死というものは人の前方からやって来るものではない。前々から人の後方に迫っているものである)――『徒然草』。

私のような年齢の者には身に沁みる一冊です。