榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

宇宙誕生時のインフレーション理論に関する最先端の研究成果・・・【情熱的読書人間のないしょ話(743)】

【amazon 「日経サイエンス2017年6月号」 カスタマーレビュー 2017年5月2日】 情熱的読書人間のないしょ話(743)

女房が中学・高校生の頃、大ファンだった加山雄三のコンサートに誘われました。当年80歳の加山が息切れすることなく何曲も、当時を髣髴させる歌声で歌いまくったのには、驚きを超えて感動してしまいました。人生を前向きに歩むことの大切さを痛感しました。あちこちで、赤色のレンゲツツジ、白色と桃色のヒラドツツジが咲き競っています。我が家の片隅で、モチツツジの園芸品種である薄紫色のハナグルマ(花車)が咲き始めました。白色のクルメツツジ、紫色のミヤコワスレ、桃色のウスベニカノコソウも頑張っています。因みに、本日の歩数は14,199でした。

閑話休題、「日経サイエンス2017年6月号」(日経サイエンス社)に掲載されている「インフレーション理論の現在――小松英一郎が語る絞られてきたモデル」(中島林彦著、小松英一郎協力)では、宇宙誕生時のインフレーション理論に関する最先端の研究成果が紹介されています。

「誕生直後に宇宙が急膨張したとするインフレ―ション理論は宇宙最古の光、『宇宙マイクロ波背景放射』の全天観測によって検証が進んでいる。インフレーションのモデルは多数提唱されているが、小松(英一郎)博士によると、有力なモデルの多くは淘汰され、最初期のモデルが改めて脚光を浴びている。現在、インフレーションで生じたと考えられる原始重力波の探索が進んでおり、その結果でモデルの正しさが試されることになる」。

インフレーションとビッグバンの関係は、どう考えればいいのでしょうか。「インフレーション理論によれば、(約138億年前に宇宙が)誕生したその刹那、1兆分の1の1兆分の1のさらに1兆分の1秒という極めて短時間に、空間は1兆倍の1兆倍のさらに100倍以上という途方もない膨張をした。これを例えるならば原子核ほどの大きさが瞬く間に太陽系ほどの大きさになってしまう凄まじさだ。・・・インフレーションの加速膨張によって宇宙は極限まで冷え込んだとみられる。インフレ―ションが終わると、加速膨張の原動力となった膨大な『真空のエネルギー』が熱エネルギーに変換され、宇宙は超高温状態になった。これがビッグバンだ。一般的に宇宙の始まりそのものをビッグバンということもあるが、インフレーション理論によれば、インフレーション終了に伴う宇宙の熱化がビッグバンになる」。

これまで提唱された多くのインフレーション理論の中で、正しいのはどれでしょうか。「スタロビンスキーモデルは、インフレーション理論の原点となったモデルだ。・・・(ロシアの)スタロビンスキー博士は、佐藤(勝彦)・グース両博士の論文が出る前年の1980年に発表した論文で、一般相対論を超高エネルギー状態に適用しようとすると量子論的な補正が必要になると指摘。その補正をするとインフレーションが起きることを理論的に示した。・・・佐藤・グース両博士がそれぞれ提唱したインフレーションのモデルは、後にインフレーションをうまく終わらせることができないことがわかり、その後、米スタンフォード大学のリンデ教授ら、多くの研究者が様々なモデルを提唱した。しかし綿密な宇宙論的観測を経て生き残ったモデルの1つは結局、インフレーション理論の原点となったスタロビンスキーモデルだったわけだ」。

宇宙を構成する普通の物質、暗黒物質、暗黒エネルギーの比率は、どうなっているのでしょうか。「宇宙の主要な要素は星やガスを形作る普通の物質と、普通の物質とは重力を介してのみ相互作用する正体不明の暗黒物質、そして暗黒エネルギーの3つ。(探査機)WMAPとプランクの観測によると、宇宙が持つ全エネルギーに占めるそれらの割合は、普通の物質は約5%、暗黒物資はその約5倍の約27%、暗黒エネルギーは実に約68%と全体の約7割を占める」。

日、米、露の研究者たちによって提唱されたインフレーション理論が、観測によって検証される日が近づいているのです。