榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

厳しい環境下で肩を寄せ合って頑張る農民一家の自伝的物語・・・【情熱的読書人間のないしょ話(767)】

【amazon 『小さな家のローラ』 カスタマーレビュー 2017年5月29日】 情熱的読書人間のないしょ話(767)

散策中に、白い花を咲かせているホンシャクナゲを見つけました。山野草展で、水色のヤマアジサイ、薄桃色のセッコク、紫色のウツボグサ、桃色のアッツザクラ、白色のシロウマアサツキ、白色のユキノシタ、白色のイワタバコの花を観察することができました。盆栽展のサツキが見事です。我が家の庭のアジサイたちが徐々に色濃くなってきました。因みに、本日の歩数は10,641でした。

閑話休題、1975年から204回に亘り放映された米国のテレビドラマ『大草原の小さな家』は、私たち夫婦の必見番組でした。厳しい地理的環境下で肩を寄せ合って頑張る農民一家の温もりが魅力的だったからです。加えて、原作者であり主人公である次女・ローラのお父さん・チャールズとお母さん・キャロラインの仲のよさが素晴らしかったからです。

小さな家のローラ』(ローラ・インガルス・ワイルダー著、安野光雅絵・監訳、佐藤由紀翻訳協力、朝日出版社)は、原作の味わいに合致した安野光雅描くところのたくさんの挿し絵が大きな魅力になっています。一家のほのぼのとした雰囲気が、視覚的にも伝わってくるからです。

「それは、ビッグウッズの自然のなかの、小さな家のできごとでした。外は雪で、凍りつくような寒さでしたが、丸太の家は暖かく、心まで温まりました。お父さんとお母さん、(姉)メアリーとローラ、そして赤ちゃんのキャリーがみんないっしょにいれば、それだけで楽しく幸せでした。とくに夜はそうなのです。暖炉の火があかあかと燃え、寒さも暗闇も、けものたちも家に入ってくることはできません。ブルドッグのジャックとネコのブラックスーザンは、暖炉の前で寝そべっています。お母さんはロッキングチェアにすわり、テーブルの上のランプのあかりで縫い物をしています。ランプが明るく輝きます。・・・ローラはランプを見ているのが好きでした。・・・暖炉の火を見るのはもっと好きでした。暖炉の火は、薪の上でまばたくように黄、赤、緑と色を変えていき、金色やルビー色の燠火の上で、青い炎になってゆれました。冬の夜は、お父さんのお話が聞けました」。

「そして、お父さんの青い目が輝きました。いちばん大切なことをとっておいたのです。お母さんにむかっていいました。『なあ、キャロライン! ダンスもあるぞ!』。お母さんはにっこりしました。とてもうれしそうで、つくろいものの手をちょっととめ、『まあ、チャールズ!』と、弾んだ声になりました。お母さんは縫いものにもどりましたが、笑顔はそのままでした。『モスリン(やわらかい毛織物)のドレスを着ようかしら]と、つぶやきました』。

「お父さんが、お母さんのエプロンをつくる綿プリントも買おうとしました。お母さんは遠慮しています。『あら、いいのよ、チャールズ、本当にいらないんだから』。でも、お父さんは笑って、お母さんが選ばないなら、まっ赤な地に大きな黄色い模様がついたはでなものにするぞ、といいました。お母さんはくすっと笑って、うすい茶色にバラのつぼみと葉っぱがついた生地に決めました」。

「そして、お父さんはお母さんのほうをむいて、いいました。『お母さんがいれば、だれも飢え死にしないよ、キャロライン』。『まあ、そうじゃないのよ。チャールズ、あなたがわたしたちに食べ物を持ってきてくれるからでしょう』と、お母さんはいいました。お父さんは満足そうでした。気持ちのいい夜でした。ドアや窓は夏の夜にむかって大きく開かれ、お母さんが洗ってローラとメアリーがふくお皿は、カチャカチャと楽しげな音をたて、お父さんはバイオリンをしまって、うれしそうにそっと口笛をふきます」。

我が家には、些細な夫婦喧嘩をしてしまったときは、「ごめんね、キャロライン」と私が声をかけ、女房が「こちらこそ、チャールズ」と応えて、仲直りするルールがあります。チャールズとキャロラインの仲のよさを見倣おうという気持ちから、1975年に始まった習慣です。