榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

『水滸伝』の物語を楽しむだけでなく、組織論も学べる一石二鳥の一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1159)】

【amazon 『水滸伝に学ぶ組織のオキテ』 カスタマーレビュー 2018年6月27日】 情熱的読書人間のないしょ話(1159)

今朝は、カワラヒワの囀りで、早くに目が覚めました。散策中、ヒカゲチョウを見かけました。あちこちで、さまざまな色合いのユリが咲き競っています。因みに、本日の歩数は10,528でした。

閑話休題、『水滸伝に学ぶ組織のオキテ』(稲田和浩著、平凡社新書)は、『水滸伝』の波瀾万丈の物語を楽しむだけでなく、組織論も学べる一石二鳥の一冊です。

「『水滸伝』は中国宋代を舞台にした物語である。北宋末期、政治が腐敗し人民が苦しんでいた時代、百八人の豪傑が山東の『梁山泊』に集い、革命の狼煙を上げるという物語。元代に都市の盛り場で上演されていた講談や芝居が、明代に物語としてまとめられた。作者は施耐庵とも羅貫中とも言われている」。

「『水滸伝』前半は、個々の豪傑たちの武勇伝、冒険譚が続く。物語の最大の魅力は個性的な百八人の高潔たちの武勇伝である。ところが、後半、豪傑たちが梁山泊に集いはじめると、今度は組織の物語となってゆく。宋江というリーダーのもと、革命の『志』が旗として掲げられ、軍師の呉用が戦略を立てて豪傑たちが動くのである。個人プレイから組織へ。物語の流れの中に、現代企業を生かす戦略のキーが隠されているように思うのである」。

著者は、リーダーとは何か、と問いかけます。「組織にとってリーダーとはもっとも重要な存在である。企業で言えば経営陣であり、そのトップに立つCEOともなると権力と責任は大きい。梁山泊の頭領は宋江。(物語の第)71回で頭領に選ばれる。では、宋江は組織のトップとして適任であろうか。実は宋江という人物、主人公なのに『水滸伝』読者にはあまり評判がよろしくない。理由はあげたらきりがない。まず、宋江が頭領としての器かどうかが疑問。名前先行で実力が伴っていない。武芸がまるで出来ない。といって頭が切れるわけではない。泣き虫。およそ豪傑としての見所がない。自分に優しく他人に冷たい。中途半端な親孝行。軽率な行動でみんなに迷惑を掛ける。他人に対して警戒心がない。やり方が姑息で残酷。ホモ野郎(かもしれない)。まだまだあるかもしれない。これだけ並べると、まったく組織のトップの資質がゼロのようにも思われるが、はたしてそうだろうか」。

「実は宋江ほど、組織のトップとして適任な人物はいないのだ。いや、組織のトップは彼のようであるべきだと筆者は考える」。これは、いったい、どういうことでしょうか。

「戦闘能力もなく、戦略、戦術にも長けていない宋江の唯一の取り柄は何かと言えば、部下からの絶対的信用である。李達や武松、花栄、呉用、張順・・・、皆、宋江のために一命を賭して戦った。・・・では、戦闘もせず戦略も立てない宋江は何をするか。トップの仕事とはもっと別のところにあるのだ。・・・梁山泊はエキスパートの集団なのだ。では、トップの仕事とは何か。ずばり、その集団がどうあるべきかの方針、指針を決定するのである。梁山泊の方針、意思決定をするのが頭領の仕事なのだ。・・・企業でいうところの企業理念である。それをきちんと打ち出せる能力のある人物をトップと呼ぶ。その意味で宋江はトップとしては申しぶんのない人物だ。・・・方針を決定し、細かな現場のことには口を出さず、部下を信頼する。宋江こそが、まさしく梁山泊の頭領なのだ」。

企業のトップを務めていた時に、本書に出会えていたらと思いますが、私の場合、時、既に遅しです。