榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日航機123便墜落に対する謀略論・陰謀論に止めを刺す決定的な一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1252)】

【amazon 『日航機123便墜落 最後の証言』 カスタマーレビュー 2018年9月29日】 情熱的読書人間のないしょ話(1252)

東京・上野動物園のシャンシャンが大人になる前に見たいと女房にせがまれ、パンダ舎の前で1時間並びました。野生のシラコバトを見ることがなかなか叶わないので、30分も観察していたところ、思いがけなく交尾を目撃することができました。フクロウ、シロフクロウ、ルリカケス、ヤマガラをカメラに収めました。ガラス越しだが、スマトラトラが50cmの近さまでやって来ました。

閑話休題、日航機123便墜落に対する、根拠の裏付けがない謀略論・陰謀論が横行していることに眉を顰めている人が多いことでしょう。『日航機123便墜落 最後の証言』(堀越豊裕著、平凡社新書)は、謀略論・陰謀論に止めを刺す決定的な一冊です。

日航機123便墜落とは、どういう事故だったのか、復習しておきましょう。「お盆休みに入る1985年8月12日、羽田から大阪に向かった日本航空123便のボーイング747(ジャンボ機)が群馬県多野郡上野村の山中に墜落した。奇跡的に助かった女性4人を除く常客乗員520人が亡くなった。単独機の事故による犠牲者数としては30年以上たった今も史上最も多い。運輸省航空事故調査委員会(事故調)は墜落から1年10カ月後、客室を与圧する後部圧力隔壁の破壊が原因だと結論づけた。この飛行機は事故の7年前、大阪空港でしりもち事故を起こしていたが、メーカーのボーリングが客室と尾翼部分を隔てる圧力隔壁を交換する修理でミスをした。最終報告書は、修理ミスのため隔壁の強度が弱まり、突然の破壊を招いたと説明した」。

ボーイングの修理ミスとは、いかなるものだったのでしょうか。「圧力隔壁は密閉性が肝要である。修理工は上司が指示した『接ぎ板』の意味を十分理解せず、隙間をふさぐ『埋め込み板』と勘違いした可能性が大きい」。

ボーイング、NTSB(=米国で航空事故調査を担当する政府機関、米運輸安全委員会)、連邦航空局のメンバーら計10人以上が机を囲んだ、米大使館における事故調査会合の席上での出来事について、こういう証言が得られています。「修理に深く関与したメンバーが(来日した)ボーイングの一員にいた。ジャンボ機の機体構造に詳しい人物だった。修理ミスの事実が(会議室で)公表された際、彼は全員の前で嗚咽し始めた。赤ん坊のように泣いていた。仲間が犯したミスの重大性を認識し、いたたまれなかったのだろう」。

「修理ミスがあったと仮定して、連邦航空局のトム・スイフトがどれだけ飛べば圧力隔壁が破壊するかを計算した。1万回ぐらいの飛行で壊れることが計算上導かれ、(事故機の)実際の飛行回数と合致した」。これは、修理ミス説を強力に補強するものです。

冷静に、かつ合理的に考えれば、事故の原因は圧力隔壁の修理ミスしか考えられないが、未だに謀略論や陰謀論が消えません。「落下した尾翼など機体後部の回収が不十分に終わり、日本の捜査当局がボーイング側から直接聴取できなかったことが決定的な影響を与えた」からでしょう。

事故調の結論に対する異論は、3つにまとめることができます。「1つ目は、客室の急減圧など起きておらず、垂直尾翼は圧力隔壁の破壊とは別の理由で吹き飛んだという別原因破壊説、2つ目は、当時世界中で600機が飛んでいたボーイングのジャンボ機全体に構造的問題が潜んでいたのに、修理ミスを故意にクロースアップさせて原因を事故機だけに矮小化したという米国謀略論、3つ目は、そうした技術的な問題で墜落したのではなく米軍や自衛隊のミサイルや標的機が(事故機の)垂直尾翼に当たり、いわば撃墜されたという主張である」。

著者は、自衛隊による撃墜・誤射説を主張し続けている、日航の元客室乗務員・青山透子と会い、意見を戦わせています。また、青山の主張に反論している、元日航機長・杉江弘から意見を聴取しています。

日米における粘り強い調査を踏まえた著者の結論は、こういうものです。「自衛隊や米軍のミサイル、あるいは無人標的機が当たったという説は爆発特有の痕跡が見られないことから、排除できる。日本も米国も最初は、爆弾のようなものが当たったのではないかという疑いから入って調べたが、痕跡がなかった。爆撃説に立つ本を何冊か読んでみたが、事象を牽強付会にとらえている面があるように感じた。墜落直後に報じられた新聞記事の内容について、その後続報がない点を不自然とみなし、政府の関与や圧力に結びつける主張もある。・・・『修羅場』で(新聞記者が)書いた記事に、後から冷静に見て一定の齟齬が生じるのはやむを得ない。そもそも自衛隊や米軍が日航機を狙う理由や動機もないし、30年以上たてば何かの証拠が出てくるのが自然ではないか」。

青山の本と本書を読み比べた結果、私は圧力隔壁修理ミス説に軍配を上げます。