榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

大脳新皮質がない魚たちは、痛みを感じることができるのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1342)】

【amazon 『魚たちの愛すべき知的生活』 カスタマーレビュー 2018年12月23日】 情熱的読書人間のないしょ話(1342)

野鳥観察会に参加しました。アトリの雄、アトリの雌、マヒワ(この個体の種名を、野鳥に造詣の深い7人に尋ねたところ、メジロ派4人、マヒワ派3人だったが、白いアイリングがないので私はマヒワと判断)、ジョウビタキの雌、シロハラ、ホオジロ、カワセミの雄、セグロセキレイ、ツグミ、ムクドリ、ヒヨドリ、オナガをカメラに収めることができました。猛禽類の食痕、アズマモグラの死骸が見つかりました。アズマモグラが巣の外へ排出した土が盛り上がっています。因みに、本日の歩数は16,182でした。

閑話休題、『魚たちの愛すべき知的生活――何を感じ、何を考え、どう行動するか』(ジョナサン・バルコム著、桃井緑美子訳、白揚社)は、人々から誤解されている魚たちの名誉回復を目指した著作です。

魚は快感を覚えることがあるのでしょうか。「マンボウは英名をオーシャンサンフィッシュというが、これは海面に体を横たえて日光浴をするのが好きなことからきている。この大きな魚は寄生虫の宿のようなもので、体長15センチもある大きいカイアシ類など、40種もの寄生虫が体表についている。そこでマンボウは水に漂う昆布棚の下にならんで、掃除魚に掃除してもらうのを待つ。先頭のマンボウは、さあ取りかかってくれとばかりに体を横たえる。ところが寄生虫のなかには大きすぎて掃除魚にも取れないものがあり、こうなるとマンボウはスペシャリストを頼みにする。海面まで上がっていき、体に刺さった寄生虫をカモメのがっしりしたくちばしで引き抜いてもらうのだ。カモメにつきまとってその横にならんで泳ぐマンボウの姿が目撃されている。皮膚がチクチクする不快さがなくなると気持ちよいことも、カモメが寄生虫を退治してくれることもマンボウは承知しているといったら言い過ぎだろうか。ことによると100年も生き、広い大洋を何キロも泳ぐこの賢い生きもののことだから、そうとしか考えられないと思うのだが。気持ちよさを知っていれば、痛みも知っていることになる。わたしにはそう思えてならない。だが、魚のゆたかな生活の理解が着実に深まっているとはいえ、痛みを感じる能力についてはまだ決着がついていない」。

魚は痛みを感じるのでしょうか。痛みを感じないと主張する学者たちは、魚には大脳新皮質がないことをその論拠にしています。「鳥類は新皮質がないが、鳥には意識があることを示す証拠はほぼ全面的に認められているのだ。・・・鳥類の古皮質が平行進化の道をたどったことを踏まえて2005年に見直され、これにより鳥類の認知力は哺乳類と肩をならべると認められることになった。生きものが意識をもち、経験し、巧妙なことができるためには、そして痛みを感じるためには、新皮質が必要だという考え方を鳥が葬ったのだ」。

「哺乳類に皮質があるなら、それに対する魚類の答えは外套である。多様さと複雑さが顕著に表われた脳の部位だ。魚類の外套の計算能力は平均して霊長類の新皮質のそれよりも低いが、その機能は哺乳類の新皮質ないし鳥類の古皮質のそれに相当することがしだいに明らかになっている」。今日、魚が痛みを感じることを示す証拠が説得力を増してきて、権威ある機関も支持するようになっているというのです。

「魚はその生息環境に適した五感を発達させています。繁殖と子育ての戦略もバラエティに富み、状況に応じて性転換したり、卵や子を口のなかで守り育てたり、はてはある種の鳥のように托卵したりする魚までいます。魚は学習し、計画し、道具を使いもするし、さらには社会を形成してたがいに意思を伝え、協力関係をきずき、騙したり騙されたりもするようです」。本書を読み終わった時、これまでと違った目で魚を見ている私を発見しました。